篠田麻里子の卒業で困る人たち
先日、AKB48第5回選抜総選挙が行われ、大きな話題となりました。
言うまでもなくAKB48にまつわるいろいろは、もはや国民的関心事。天気(「梅雨なのに雨降りませんね~」)やサッカー日本代表(「本田って、ほんとメンタル強いですよね!」)などと同じく、世間話における定番トピックとなっています。
会社の昼休みに気の置けない仲間と、あるいは、合コンや飲み会であいさつがわりに。
「そういえば、ニュースで見たんだけど」ぐらいのノリでAKB48の話題になったこと、自然発生的に「で、AKB48の中だったら誰がいい?」的に盛り上がったこと、みなさんも経験あるのではないでしょうか?
さてそんな時、みなさんならどう答えますか?
もちろん、特定のメンバーを応援している人は熱烈にその子の魅力を語るかもしれません。逆に、まったく知らなければ「誰が誰か分からないんですよね、はは」と話を終えてしまうかも。
ですが「CMやグラビアで見てるから知ってはいるし、何人かの顔と名前は一致するけど、それほど熱心なファンなわけではない」という多くのオトナ男性にとって、これは意外と悩ましい問題です。
生半可な知識で「●●とか○○とか、いいよね」と勝負をかけてみても、相手がそのメンバーを知らず「はぁ、そうなんですか」と空振りに終わる(か、逆に相手が詳しすぎて、否定されてしまう)。
あるいはちょっと可愛いなと思う子の名前を挙げてみたら、女性たちから「えー、ああいう子がタイプなんですか!?」「子どもにしか見えないだけど!!」などと過剰反応されてしまうのも、面白くない。
かといって、スキャンダルで名を馳せたメンバーの話に振ってしまうのも、どこか殺伐とした空気が漂います(「あそこまでしなくても」「あの子は実は」)。
そう考えると「AKB48の中で誰がいい?」は、一見無邪気なようでいて実は地雷の多いテーマ。俗に「政治と宗教の話はパーティではタブー」などと言いますが、それに近いものがあるかもしれません。
なんとか無難に切り抜けたい。場の雰囲気を壊さずに会話を続けたい。いったいどうすれば・・・。
そんなとき、「篠田麻里子」こそ、完璧な回答だったわけです。
年齢も若すぎず(27歳)、グループでは珍しい「お姉さんキャラ」なのでオトナ受けはばっちり。さらには、すらっとしたモデル体型でファッション誌でも活躍するなど、女性ウケもOK。知名度が高くてクリーンなイメージは、文句なしの100点回答だったのです。
実際、ふわっとした世間話の場面では、尋ねたほうも濃い答えを期待しているわけではないので、「篠田麻里子」であれば安心して受け止めることができます。
「AKB48で誰か気になる子、います?」
「篠田麻里子とか可愛いかな」
「あ、あの人、キレイだよね。私も好き」
というよどみのない展開は、
「梅雨なのに雨降らないですね」
「それはそれで、水不足とか困っちゃいますよね」
「ほんとにね」
にも似た、オトナな受け答え。「様式美」とも言うべき安定感がそこにはあります。
実際、身のまわりのアラサー・アラフォー男性(&女性)が、突然巻き込まれたAKB48トークを「シノダマリコ」の一点張りでなんとか切り抜けるシーンを、これまで何度も目にしてきました。
それなのに、です。
その篠田麻里子が、先日の総選挙の際、来月の福岡ドーム公演をもってAKB48を卒業することを発表しました。
彼女の決断の裏にある思いや、世代交代の印象が強くなったAKB48の今後については、さまざまな意見・見解があるでしょう。
ですが少なくとも「それほど詳しくはないけれど、一応、素養として知ってはいる」多くのオトナたちが、今後AKB48の話題になったときに「えーっと、篠田麻里子…は、卒業しちゃったんだっけ」と困るシーンは増えそうです。
「マリコ様」の偉大さを、人々がほんとうに実感するのは、まだこれからかもしれません。