カラーテレビは何年で買い替えられているのだろうか
テレビの買い替え年数は約9年
数年前には地デジ化で大きな買い替え需要が生まれたが、新機種の発売に合わせ、故障や引っ越しの際にもテレビの買い替えの必要性は生じる。それではテレビは平均で何年ほどで買い替えがなされているのか。内閣府が2017年4月に発表した消費動向調査の2017年3月実施分の公開データをもとに確認する。
消費動向調査では買い替え状況において2014年分以降の調査票では「カラーテレビ 薄型(液晶、プラズマ等)」と記述されている。2013年までは単に「カラーテレビ」だったため、買い替え対象にはブラウン管・薄型テレビ双方を含んでいたことになる。地デジ化も果たし、実質的にブラウン管テレビの販売もほぼ終了したとの意向によるものだが、2013年と2014年との間に完全な連続性は無いことに注意する必要がある(とはいえ、今更ブラウン管テレビ「に」買い替える人も滅多にいないだろう)。
世帯区分は「単身世帯」と「二人以上世帯」、そして双方を合算した「総世帯」の3つが用意されている。ところが長期時期系列としてデータが保存されているのは「二人以上世帯」のみ。そこで「二人以上世帯」について、買い替え年数推移を長期期間の範囲で確認する。
中期的な動向を見るとテレビの買い替え年数は9年前後で安定。しかし2010年以降は毎年少しずつ、確実に年数が短縮されている動きを示していた。2011年7月の地デジ化に伴い、チューナーで地デジ対応化したテレビを使っていても、調子が悪くなったり故障などをきっかけとして「安くなっていることもあるし、せっかくだからこの際、修理をせずに対応機種に買い替えるか」とする動きが起きた結果によるものだと考えられる。
2014年にいたっては、取得できるデータ中ではもっとも短い6.3年を示した。これは一つに地デジ化による移行、そしてもう一つに2014年4月からの消費税率改定に伴い、それに先駆けて駆け込み的に、従来の買い替え期間よりも前倒しでテレビを新規調達した、いわゆる「駆け込み需要」によるものと考えられる。家電商品の多くはこの「駆け込み需要」の影響で買い替え年数の短縮現象が発生しているが、ここまで明確な値を示したものは今件カラーテレビぐらいなもの。また上記にある通り、調査対象のテレビの中身が微妙に変化したのも大きく短縮した一因だろう。
しかしその2014年がピークとなり、以降は少しずつ年数は元の長さに戻りつつある。2015年では地デジ周りの仕様変更の後遺症的なもの(アナログからデジタルへの移行時における特例措置として、ケーブルテレビ事業者が提供してきた経過措置的サービスのデジアナ変換サービスが2015年3月前後に相次ぎ終了する。CATVのテレビ受信サービスに加入していれば、デジタル対応のテレビで無くともそのままテレビ視聴ができる状況が終わってしまうため、デジタル対応のテレビを調達するかチューナーを接続しないとテレビ視聴が続けられなくなる)が生じているため、平年よりは短めの7.4年との値が計上されたが、直近の2017年では9.3年にまで戻した。ちなみにデータが取得可能な1997年以降の全年における平均値は9.0年、直近5年間に限れば7.8年となっている。
これを「単身世帯」(記録があるのは2008年以降のみ)の動向と重ね、グラフ化したのが次の図。
2010年にややイレギュラーな動きがあり、それまでの「二人以上世帯」>>「単身世帯」との流れが消え、双方世帯でほとんど変わらない値を示すようになった。地デジ化におけるテレビ買い替えへの圧力は、世帯構成で違いを見せなかったようだ。また上記で言及した「地デジ化に伴うテレビ買い替え年数の短縮化」そして「消費税率改定に伴う駆け込み需要による短縮化」は、世帯構成によらずに起きているのも分かる。
テレビを買い替える理由は何だろうか
次に示すのは「買い替え理由」を「二人以上世帯」「単身世帯」それぞれ別途に算出したグラフ。いくつかの年で特殊事情による変移が確認でき、興味深い。
双方世帯とも「その他」項目の増加のピークは2012年(3月)。これは回答時の該当期日である2011年4月~2012年3月の間に、2011年7月の地デジ切り替えに伴い対応型のテレビへと買い替える人が、大量に現れたことを意味する。翌年の2013年(対象期間は2012年4月~2013年3月)では、地デジ化ラッシュも過ぎ、従来の比率に戻る動きを見せた。しかし2014年では2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要が発生し、回答中「その他」の回答率が単身世帯では増加する結果となった。
直近の2017年は前年の2016年と比べ、双方種類世帯とも「故障」の比率が大幅に増加している。これは本体のトラブルで視聴が不可能になる状況以外では、テレビの買い替えが控えられていると見ることができる。買換えまでの年数の伸長と合わせ、やはりテレビそのものの性能向上に伴い、引越しや上位機種の登場でも買い替えの理由にはならず現行のテレビを使い続け、故障して初めて仕方なく買い替える事例比率が増えている、いわゆる回転率が低下していると見て良い。
地デジ化、そして消費税率引上げで2度、さらにデジアナ変換サービスの終了を別途換算すれば3度にも渡る特需要素を受け、大きく変化したこの数年に渡るテレビ買い替え状況。二人以上世帯では直近5年間に限れば上記の通り、平均買い替え年数は7.8年となり、統計データが取得可能な全期間(21年間)の平均値9.0年と比べて1年強もの短縮を示す形となった。当然、前倒し的、先取り的なテレビ買い替えの需要拡大は、その後の需要縮小につながることとなる。
2017年では2016年に続き、前年比で大きく故障理由による買い替え比率が増加した。地デジ化や大型機種へのシフトも大よそ終焉を迎え、上位品目に代える理由も特に見当たらない。そしてテレビの機械的な寿命が伸びていることを合わせ考えると、今後はさらにテレビの買い替えをする世帯数比率は減り、故障で仕方なく買い替える世帯の比率が上昇することだろう。
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