【サウナ旅:岐阜県 田辺温熱保養所】二週間に一度東京からリピートしている訳とは
2023年の2月上旬から2週間おきに訪れているのが、岐阜県は大垣市にある田辺温熱保養所です。
なぜこんなにもハマってしまったのか──その理由は大きく分けて2つあります。まずひとつ目は「治癒効果がとんでもないから」というもの。そして2つ目は「あまりにも唯一無二過ぎるから」というものです。
子供のころから僕はずっと朝夕の咳に悩まされてきました。とくに朝方の咳がとても苦しく、大人になったいまでも起床から小一時間はゲホゲホが続いてしまうのです。一日のはじまりから体力の20%くらいをこの咳込みで持っていかれてしまうのが本当に辛く(∵`)
それが、田辺温熱保養所で初めて薬草蒸しを経験してからの5日間、ピタッと止まってくれたのです。本当にビックリしました。更にいうと、剣山のような踵のガサガサも消え去ってくれたというおまけ付きです。
ただ、咳もガサガサも長年抱えてきた慢性的なものでもあるので、5日過ぎたころからまた再発してしまいました。
「それならば……!」と再度予約を入れて蒸されてみると、またぴたりと咳が止まり、踵もつるんつるんに復活。この2回目の訪問で、
「田辺で蒸された後の体調の好転は偶然じゃなかったのだ……!」
と確信し、それ以来2週間おきにこちらに通い続けている──というのがひとつ目の理由です。
なお、通っているうちに踵のガサガサは完全に治り、いまでは朝夕の咳もほとんど出なくなっています( ᵕᴗᵕ )
2つ目の「あまりにも唯一無二過ぎるから」という理由についてですが──ここで得られる気持ち良さや「ととのい」というものは、他ではちょっと得られない種類のものだからなんですね。ほかと比べて「こちらの方が上だ」という意味ではありません。まったく別のタイプのものなのです。
ありがたいことに、これまで全国の様々な施設を経験させて頂いてきました。その中のどちらとも比べようのない「ふぁぁ、ぎもぢぃ……」がここでは味わえるんですね。
まさに言葉の通り唯一であり他には無い存在だからこそ、東京から2週間ごとに通い詰めてしまっているのです ' ᵕ '
少し話は飛びますが──田辺温熱保養所には水風呂がありません。水シャワーも基本的には使いません。このあたりは後述します。
サウナーからすると、
「え? 蒸された後に水で〆ないの!?」
と困惑するかもしれません。日本式サウナとは水風呂のことである、と考える愛好家も少なくないはずだからですね。僕もその一人です。
実はこちらの施設の存在を知りながら訪問するまでに1年以上かかってしまったのは、「水風呂がない」「水シャワーを浴びない」という部分が引っかかっていたからでした。アツアツの樽から出て体を水で〆ないという手順は、どう想像しても良さそうには思えなかったのです。
あぁ……なんという勘違い。あまりにも勿体ない1年を過ごしてしまっていました(∵`)
樽蒸しの入り方
最初に、田辺温熱保養所と通常のサウナの「1セット」はまったく異なるということに触れます。
一般的に1セットとは「サウナ→水風呂→休憩」のことを指しますが、こちらでは樽蒸しと小休憩を2回行い、そのあと最後の樽蒸しから大休憩を取ることを1セットと称しています。詳しくは下記をご覧ください。
樽の中で3分~5分ほど蒸されたあとに、浴室や脱衣所の椅子で体が落ち着くまで数分裸のまま休憩し、また樽の中へ──ということを2回繰り返します。最後に樽で蒸された後は、ゆったりした部屋着などに着替えて和室でごろごろしながら保温。
これを田辺温熱保養所では1セットというんですね。
「煮物に味が染み込むのと同じ原理」と仰る女将さんはこう続けます。
「煮物って、一度煮立てたあとはゆっくり冷ます時間を作ってあげることで、味が奥まで染み込んでいくでしょう? それと同じ。急激に冷ましたりしたら、薬草の成分が深部まで染み込んでいかないの」
だからこそ田辺温熱保養所では水風呂は用意されていないし、水シャワーも使わないんですね。そしてたっぷり身体を保養してもらうのと、薬草の蒸気を深部まで染み込ませてもらうために、ここでの滞在は時間制限がありません(初回だけ3時間制限)。
サウナのように、深部体温を高めたら水風呂で体を〆て、皮膚に近い血管を収縮させることでより太い血管の血流を増加させる……という狙い&効果とはまったく違うのが樽蒸しであり、田辺温熱保養所なのです。
樽蒸し→小休憩→樽蒸し→小休憩と繰り返し、最後の樽蒸しからの大休憩は、くらっくらのふわっふわです。
水風呂もないのに、セットの最初の方からあまみが出まくるのが不思議でたまりません。春先のぽかぽか暖かい日でも、樽から出ると瞬時に体中にあまみが浮き出てくるのです。
初回時に女将さんが詳しく説明をしてくれると思いますが、一回目の樽蒸しのあとはお湯で身体を入念に流されるのが良いです。というのも、樽の中で薬草の蒸気を十分浴びた後は皮膚に老廃物がたくさん浮いてくるからなんですね。
それをざぶんとお湯で流したら、2回目以降は汗をタオルで拭っていく──というのがここでのやり方になります。
なお、回数を重ねるごとに肌がぷるんぷるんになっていくのがあからさまにわかるはずです。かかとのガサガサも、二の腕の肌荒れも、いつの間にかどこかへ消えていってしまいます。
こちらに来るときは、できるだけゆったりした部屋着や厚手のサウナポンチョを用意されると良いです。ポンチョの下に履けるタイツなどもあれば、保温もばっちりですね。あまり薄着で過ごしていると身体が冷えすぎてしまいます。
休憩所で20分~30分ほど毛布にくるまって横になったあとは、名物にもなっている「田辺茶」をすすりながら、開けた窓から差し込む陽のあたたかさと、大垣の風の気持ちよさにうっとりしてください。
このお茶がまた美味しいんです。
しかし──いったいどういう仕組みで、水風呂もないのにあんなにもととのってしまうのか、何度も通っているはずなのにさっぱりわかりません。
氷点下の軽井沢で、サ室から出て水風呂を回避して外気浴をしたことはあります。でも田辺のような、あの不思議な気持ちよさはありませんでした。
しかも、体中に浮いたあまみは、そのあと数時間まったく消えないんですね。3セットやった後はそのまま新幹線で帰京する事が多いのですが、家に帰って夜になってもあまみが消えず……なんてことも。
でも、理屈なんてどうでもいいのです。
なお、樽蒸しは完全予約制となっています。
だからこそ、混み合って大賑わいということも起こりません。閑静な住宅街の一角にあるため、地面を揺らしながら過ぎ去っていくトラックの騒音や、ウェイウェイしながら近づいてくる若い人たちの嬌声とも無縁です。
遠くに聞こえる郵便配達の50ccバイクのエンジン音や、庭に遊びに来た小鳥たちの会話に耳をそばだてながら、畳の上にだらしなく大の字になってみてください。
開け放った窓の隙間から覗く青空を眺めているあのひとときは、まるで小学生の頃に戻ったかのようにゆっくり時間が流れていきます。
「そういえば昔は、こんな風に一日がのたりのたりと進んでいたなぁ」
子供の僕は「早く時間が経たないかなぁ」と、時の歩みの遅さにうんざりしていたものでした。しかし、いまとなってはとても貴重なことだったのだと気が付かされます。それがここでは味わえるのです。
大人になって、すっかり忘れてしまったあの感覚を取り戻せるのも、田辺温熱保養所にまた来たくなってしまう訳のひとつ。冒頭に書いた「唯一無二」の本当の理由は、これかもしれません。
▼田辺温熱保養所
http://tanabeonnetsu.com/
※事前予約制です
※初回利用時のみ3時間制限
※リピーターは時間制限なし
※平日の午前中のみ、貸切利用できます
※料金や利用方法はHPにてご確認ください
筆者プロフィール
ペンネーム:まこたろ
新宿区在住|執筆業|全国のサウナを月3くらいで旅しています|プロでも玄人でも通でもなく、ただサウナが好きなだけの永遠の初心者です|2022年に巡ったサウナは全国128施設|重複を含めると200件近く|こちらでは主に旅先で訪れたサウナの紹介や、おすすめのサウナなどを紹介していけたらと思っています。
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