【サウナ旅:京都】MACHIYA SAUNA KYOTO:築160年の路地裏の町家が貸切サウナに変身
仕事で煮詰まり、パソコンに向かいながら頭をかきむしっていた明け方4時半。
「あ、京都、行きたい」
と、JR東海のキャッチコピーみたいな欲求が、寝不足続きで悶々としていた脳を不意に通り過ぎていきました。
妻からは「糸の切れた凧」といつも苦笑いされる僕です。考えるより先に体が動いてしまうのはもう生まれながらの性分で、「そうだ!」と思ったら矢も楯も堪らず見切り発車で出発進行・全速前進なのは大人になったいまでも、小3の頃から変わっていません。
ありがたいことに、全国の様々なサウナや温泉を巡らせて頂いていますが、その旅のほとんどが思いつきと気まぐれからはじまったこと。
「カツオが食べたい!」と思ったら次の日には高知にいますし、「湯らっくすの水風呂に入りたい!」となったらその足で飛行機のチケットを取っている──というのが、これまでの旅の仕方なのでした。パソコン一つあれば、どこでもお仕事が出来てしまう有り難さでもあります。
ちなみに会社勤めのときは旅行をしたくても出来ませんでしたので、その反動がいまになって現れているのだとも思います。
築160年の京町家をリノベーションした、貸切サウナ
「京都に行きたい」と思ってしまったらもう歯止めは効きません。
仕事の締切も迫っているのに、この3日間キーボードを打つ手が止まってしまっているので、旅をする余裕なんて本当は無いはずなのです。しかし、こちとら糸の切れた凧です。気がついたら京都で泊まる宿探しスイッチがON状態。明日ではなく今日のことなので、さすがにどの宿も予約でいっぱいです。
「そうだ、こういうときは……」
と、我らサウナーの強い味方・ドーミーイン京都駅前店を見ると、若干数まだ部屋に余裕があるようです。もちろん即ポチ宿確保。
さらに新幹線の席を取りつつ、以前から作っていた「京都に行ったら立ち寄りたいサウナリスト」をパラパラめくっていると、目に留まったのがこの施設でした。
さすがに今日の今日では予約が取れないだろうと半ば諦めつつ予約サイトを見てみると、奇跡的に午前中の枠がひとつ空いています。宿も取り、新幹線のチケットも確保したならもう迷いはありません。
ほとんど寝ずの状態で東京駅から新幹線に飛び乗って、ノイキャンイヤホンとアイマスクを装着したと思ったら爆睡→瞬間移動で京都駅にご到着→タクシーでこちらへ。
スタッフの方に中を案内されている間、ずっと感じていたのは「ホンモノの匂いがするなぁ」ということ。きれいにリノベーションされてはいるものの、観光用のなんちゃって町家ではなく、確かにここには以前人が暮らしていたという「生活の空気」が色濃くまだ漂っているのです。
古民家と謳いながらすっかりその良さを薄めてしまい、急ごしらえのトラマのセットのようなチープな施設に生まれ変わってしまった建物が実は少なくありません。
しかしここは隅から隅までしっかりホンモノの匂いが染み付いているのです。
サウナ室は縦に長い構造で、6人は余裕で入れる広さがあります。
設定温度は85度と数値だけ聞くとマイルドに思われそうですが、セルフロウリュが出来るのと、壁からの放射熱で温度以上にムッとした熱さが感じられます。
ちなみに壁には水墨が塗られているとのこと。写真では少し明度を上げていますが、本当は肉眼で見るともっとやわらかくて、薄暗くて、しっぽり落ち着けるサ室に仕上がっていました。
貸切なので見知らぬ誰かと空間を共有する緊張感もありません。余計な音楽もなく、聞こえるのはストーブの微かな唸り声だけです。スタッフさんは時間内は少し離れた場所にある事務所に戻っているため、誰もいない完全プライベートな時間を心置きなくゆっくり過ごせるのが心地よすぎます。
なお総檜造りの水風呂は、チラーを使って15度まで冷えています。至れり尽くせりか。
ととのいスペースは、水風呂の隣室の居間になります。
木製の揺り椅子タイプのものが3つ用意されているものの、大の字になって休憩するのが好きな僕は迷わず縁側でトドのお昼寝スタイルをチョイス。
京都の春先の優しい風がそよそよと身体をくすぐり、そっと去っていきます。
この季節、ちょうど午前中のこの時間だけ裏庭の縁側には陽が差し込んでくれるようで、足元だけ太陽に当てながらの大の字外気浴があまりにも至極すぎました。
2階の冷蔵庫にはコーラや炭酸水、ポカリ、ミネラルウォーターなどが山ほど用意されていて、自由に飲むことが出来ます。ソファやロッキングチェアもあるので、ひとしきり外気浴を楽しんだら2階に上がったこちらで大休憩をしても良いでしょう。
窓からは、中庭の紅葉が風に揺れる様子を眺められます。秋になったらめちゃきれいに色づくんだろうなぁ。
いわゆる「京の町家」のため、表通りからは狭い間口を通って奥に入ったかわいいサイズの敷地に、隣家と身を寄せ合うように建っています。
そのため、部屋の向きによっては陽が入りづらいのかもしれませんが、あの手この手で太陽の明かりを取り込もうとする知恵とノウハウが随所に見られました。
スランプ気味で、まったく仕事が進まない数日を悶々と過ごしていた僕にとって、こちらで過ごした3時間は最高の気分転換になりました。
もちろん近場のホームサウナも大好きで、比べようもないくらい大切な存在であるのは変わりありません。でもこうして普段触れられない空気に触れて、日常から離れた場所で過ごす時間というものは、英気を養う手段として最高だったりもするのです。
しかもそれがこちらの施設のように「なんちゃって」ではなく、ホンモノを提供してくれているとなったらそれこそ格別です。
平日の1セッション3時間の料金は、ひとり8,000円と少しお高い料金帯かもしれません。
しかし、東京に帰ってきてからも、このとき過ごした素晴らしい時間をいまだに折に触れて妻に熱く語ってしまうのは、やはりそれだけ記憶と心に刻まれた感動が強烈だったのだと思います。
ととのうためには、スペックだけが重要というわけではありません。もちろんサ室の温度や水風呂の数値も大事なのかもしれませんが、施設から醸し出される「空気」というものも見過ごせない大事な要素なのだと、ここに滞在している間に身に沁みながらぼんやりと考えていた僕なのでした。
▼MACHIYA:SAUNA KYOTO(町家サウナ)
https://resauna.jp/kyoto
京都府京都市中京区三坊西洞院町561西側奥
※烏丸御池駅から徒歩5分
───[営業時間]───
第1セッション:9:00~12:00
第2セッション:12:30~15:30
第3セッション:16:00~19:00
第4セッション:19:30~22:30
───[料金]───
平日:8,000円/人
土日祝:9,800円/人
筆者プロフィール
ペンネーム:まこたろ
新宿区在住|執筆業|全国のサウナを月3くらいで旅しています|プロでも玄人でも通でもなく、ただサウナが好きなだけの永遠の初心者です|2022年に巡ったサウナは全国128施設|重複を含めると200件近く|こちらでは主に旅先で訪れたサウナの紹介や、おすすめのサウナなどを紹介していけたらと思っています。
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