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金融市場でのリスクに備える

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Motoo Naka/アフロ)

 突然来る地震と違って台風はある程度、いつどの程度の規模のものが、どのあたりに来るのかは予測できる。今回の台風19号も数日前に出ていた進路予想通りとなっていた。しかし、勢力の強い台風が来るのがどのあたりかわかっていても、その被害を完全に防ぐことはできなかった。

 川の氾濫なども具体的にどこで起きるのかは今回も予測しづらかったと思う。それでも過去の氾濫を経験したところでは、それに備えて早めの避難を行っていた人も多かったと思う。過去とまったく同じことは起きないものの、同じようなことが起きる可能性は意識しておく必要がある。

 これは金融市場でも同様であろう。日本でのバブルの崩壊、リーマン・ショック、そして欧州の信用不安などによる金融市場での動揺はそれほど昔のことではない。

 日本の債券市場でも以前に紹介したように89回債の急落とタテホショック、さらには資金運用部ショック、VARショックと呼ばれた債券価格が急落したケースがあった。異常なくらいに上昇した相場はいつか大きく反落する。過去にそれを何度も繰り返してきた。

 現在の債券の利回りは多くの国でマイナスとなっているものが多い。これは過去に経験したことがない状況である。債券の利回りと価格は反対に動く。つまり、異常なほどに金利が低下しているということは、裏を返せば異常なほどに債券価格が上昇しているということになる。

 異常な価格がさらに上昇してくれば買っていれば儲かる。異常に高いとして、空売りすると大きく損失を発生してしまうことも考えられる。そのショートカバーでさらに価格が上昇することもある。相場の鉄則は流れに乗ることにある。

 しかし、異常な金利水準、異常な価格水準に債券市場があることも確かである。これが永遠に続くことは考えづらい。ただし、たとえばバブル時に、この土地や株式市場の価格上昇はおかしいと思いながらも、反転するまでは買い続けていないと収益は挙げられない状況となっていた。

 その流れが急に変化してバブルが崩壊してくる懸念は当然ありうる。債券市場も同様ではあるが、国債の急落を唱える人はいても結局はオオカミ少年と呼ばれてしまっていた。それでもオオカミは存在することも確かである(ニホンオオカミは絶滅したとされているが)。

 その変化時期については地震のように予測は難しい。しかし、市場に接していれば地合の変化に気がつく人も出てくるはずある。すぐに来るわけではないにしろ、債券バブルの崩壊リスクは常に意識しておく必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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