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狛江市・強盗殺人事件の実行犯らが続々逮捕 注目すべきは突出した容疑者の年齢!全容解明の鍵となるか。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

先日(22日)、狛江市で起きた強盗殺人事件にかかわった疑いで、野村広之容疑者が逮捕されました。実行犯の一人とみられています。

10年以上闇バイトの募集を調査してきた経験から、今回の容疑者の逮捕は、一連の強盗事件と犯罪グループの実態解明につながる、大きな一歩になるかもしれないと期待しています。

注目するのは、野村容疑者の年齢が、52歳という点です。

闇バイトで募集された、強盗の実行犯らは、若いはずなのに、なぜ?

一連の強盗事件は、もともとは詐欺を行っていた指示役らが、強盗に手法を転じた犯行とみられており、「ルフィ」「キム」などを名乗り、フィリピンの収容施設から通信アプリテレグラムを通じて、闇バイト募集で集められた実行犯らに指示して行っていたとされています。しかも、狛江市の事件では、90代の女性が亡くなるという、最悪の事態になっています。

これまで一連の強盗事件で逮捕されている実行犯の年齢は、20代~30代が中心でした。

ところが今回、逮捕された野村容疑者は、他の実行犯に比べて年齢が突出して高くなっているのです。ここに「闇バイト募集で集められた人物ではない可能性」も感じています。もし闇バイトで募集されていたとしても、犯罪行為に関して精通しているか、指示役らの大きな信頼を得ていた人物なのではないかとも思うのです。

40代では、”たたき”は厳しいと言われたことも

筆者が闇バイト募集の実態を調査するなかで、リクルーター(闇バイトを募集する人)から「縛ってもらって、家のお金をとる」という“たたき”(強盗)の仕事の説明を受けた際、「歳を取っていたら、(たたきは)厳しいかもしれない」と言われて、詐欺の「受け子」(被害者宅にお金を取りにいく役)をするように勧められた経験があります。この時、筆者は40代前半で連絡していました。

40代でさえこの対応ですから、50代を実行犯の一人にすること自体、非常にまれであり、本来、ありえないことです。

報道番組を通じて、男の逮捕の様子をみました。複数の捜査員に囲まれても、動じることなく対応する野村容疑者の姿を見て「もしかして、この人物なら」と感じるものがありました。

現場で統括していた人物がいるはず

狛江市の事件では、犯人らはレンタカー2台に分乗しており、現場に残る足跡から少なくとも4人がいたとされています。

これまで様々な組織的詐欺グループを見てきて、どんな小さなグループであっても、必ずその中にリーダー格がいます。詐欺の電話をかける際には、架け子のリーダーがいるといった具合です。

今回、強盗を行う人たちですから、素行の荒い人もいると思われます。そうした者たちを一つのチームとして、現場でまとめていた人物がいたはずで、そうでなければ、これだけの統率のとれた犯行を実行できないと考えています。

しかしすでに逮捕されている、実行犯とみられている永田陸人容疑者だけでは若く、どうにも現場チームのリーダーとして、複数の実行犯を取りまとめる力はないようにも感じていました。

渡辺容疑者らよりも、歳が上

何より、今回逮捕された野村容疑者の年齢は、指示役とされている渡辺優樹容疑者、今村磨人容疑者の38歳より上です。本来「年上は使いづらい」ものです。

野村容疑者が実行犯の一人だとすれば、なぜ指示役らが自分たちより年上の人物を登用したのか。それは、よほどの信頼があるからか、現場でまとめる力があるからだろうと思うわけです。

今回、捜査員らを前にして、さほど動じない野村容疑者の姿を見て、この人物なら、今回の実行グループを統率するなどの中核を担っていたとしても、おかしくないように感じました。今後の捜査の注目点の一つとみています。

もちろん野村容疑者が闇バイトで募集された可能性はありますが、この人物が指示役4人の誰かからのつながりで犯行に参加していた場合、犯罪グループの解明に欠かせない人物になるからです。

また、組織的強盗の場合、役割分担が決まっています。

レンタカーを借りて手配する人物、運転手役兼見張り役、通信アプリで指示を受けて、忠実に実行する人物、そして家に誰が侵入する手はずになっていのかなど、ある程度決まっていると思われます。どのような手順で犯行が行われたのか。その解明に近づくための一歩となるのが、今回の実行犯らの逮捕です。

強盗対策の基本は、詐欺対策と同じ

指示役らが逮捕されることで、この強盗グループによる被害はなくなるかもしれません。しかし今後、気をつけたいのは、この組織的強盗の手法をまねて、闇バイトなどで募集された人間たちが、統制の取れたグループを作って、複数人で押し入る強盗・窃盗への懸念です。

ただし組織的強盗への対策は、これまでの詐欺対策と基本的に同じ部分も多くあります。

1.財産(お金のある状況)を電話や訪問で事前に把握されないことです。

家にかかってくる、詐欺の前触れ電話(アポイント電話)を防ぐことが大事です。そのために、詐欺対策用電話をつけて、不審な電話をブロックすることを勧めます。もちろん、高齢者の一人暮らしなど家族情報を知られないことも大事になります。

2.なりすまし対策が必要です。

詐欺では、息子や市役所職員、金融機関職員になりすましてだまし、お金を取ります。強盗も同じで、家人に扉を開けさせるために、宅配業者などを装ってやってきます。

詐欺では、電話を受けた人が、息子を騙る人物から電話を受けた時に「おかしい」と違和感を覚えて、電話を切った方は被害を防いでいます。

組織的強盗対策でも、心に抱いた、小さな違和感を大事にして下さい。

通常の宅配業者であれば、いつもと同じ人が来ますし、会社によって服装も決まっています。見慣れない制服や人物であれば、おかしいと思ってください。怪しいと思えば、ドアのチェーンをつけての対応や、インターフォン越しの対応が必要です。

置き配も良いかと思います。ただし、外に家人が出てきたところを狙われますので、時間が経ってからモノを取るようにして下さい。

3.これまで推奨されている防犯対策は必須

組織的強盗の場合、すでに下見をして犯行に臨んでいることがあるので、玄関からの侵入が難しいと、次に窓ガラスを割っての侵入をしてくるかもしれません。窓に防犯フィルムを張るなどの対策が必要です。これまでの窃盗や強盗対策のように防犯カメラをつけるなど、以前から、推奨されている防犯対策は必須になります。

また、家に多額のお金を置いている人は、警備システムを導入することも必要でしょう。

4.地域全体での見守り

もはや一個人だけでは、身を守れない状況です。詐欺も同じですが、地域一体となって、不審者や不審車両がきていないかなど、日ごろから互いに見守り合うといった防犯活動も必要になります。

詐欺、強盗などの犯罪が増えてきており、「防犯にはお金と時間をかける」という発想が必要な時代になってきています。もはや安全はタダでは得られないのが、今の日本の状況です。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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