藤岡奈穂子vs天海ツナミが国内ボクシング史上“女子最高カード”といわれる理由
7月12日(金)、大阪では村田諒太(33=帝拳)と拳四朗(27=BMB)のダブル世界戦が行われるが、“格闘技の聖地”東京・後楽園ホールでもプロボクシング注目の世界戦が行われる。王者・藤岡奈穂子(43=竹原&畑山)に天海ツナミ(てんかい・つなみ、34=山木)が挑戦する「WBA女子世界フライ級タイトルマッチ」がそれだ。
この一戦が注目を集めているのは一言「夢のカード」だからで、ではなぜ夢のカードかといえば、圧倒的な実績を持つ両者がついにリングで対峙するからだ。
王者の藤岡は2011年のミニマム級(-47.62kg)王座を手始めに、 スーパーフライ級(-52.16kg)、バンタム級(-53.52kg)、フライ級(-50.80kg)王座を獲得。2017年にはWBO女子世界ライトフライ級(-48.97kg)王座を獲得し、国内では男女を通じて史上初、世界では女子最多タイ(当時)の5階級制覇を果たした。
アウェーの地メキシコでもベルト奪取に成功するなど、国内外での活躍が評価され、年間女子最優秀選手賞に選出されること実に5度(2011、13、15、16、17年)、女子年間最高試合賞にも4度選ばれており、まさに名王者の中の名王者だ。
対する天海ツナミは2018年度の女子最優秀選手で、スーパーフライ級とライトフライ級で2階級、日本ボクシングコミッション認可前に獲得したバンタム級王座も合わせれば3階級制覇を達成しており、今回はWBO女子世界ライトフライ級王座を返上してのフライ級王座挑戦となる。
7月11日、日本ボクシングコミッションで行われた前日計量では、藤岡がリミットの50.8kg、天海が200gアンダーの50.6kgと、共に一発でクリア。「(高いレベルでの)技術の攻防ができる相手は少ないので、試合が楽しみ」と王者がいえば、挑戦者も「日本でただ一人、5階級制覇した選手と戦えることは光栄だし、自分の実力を証明するチャンスでもある」と、コメントには互いの実力や実績へのリスペクトがうかがえる。
その上で、世界進出を狙う藤岡は「ここをクリアしなければ次の目標には行けない」と必勝を誓い、「今回は現役の女子選手もたくさん見に来るので、お手本ではないけれどこういう試合をみんなにもやってほしいという思いを込めて戦う」と、勝利プラス試合内容でも“女子史上最高カード”の看板にふさわしいものにしたいと語った。
また、天海も「“日本女子の頂上決戦”と周りに評価してもらうだけでテンションが上がるし、自分が今、その位置にいるのだと自覚することでさらにモチベーションは上がっている。勝つためのイメージはすでにできています」と、穏やかな口調の中にも自信をにじませた。
両者とも肩書きや周囲の期待など、実績のぶんだけ背負っているものは大きい。だが、そうしたものに左右されることなく、今は「この人なら」と認めた相手との、究極の拳の対話を心から楽しみにしている。両者にとって最高の時間はきっと、観る側の私たちにとっても至福の時間になるに違いない。決戦はまもなく。