前年比で68円減少の3万8642円…2022年のサラリーマンこづかい事情
日本の就労者の就業職種のうち少なからぬ割合を占めるサラリーマンにおける生活様式は、それらの人々自身はもちろん、日本の社会全体の状況を推し量る一つの指標となる。新生銀行では毎年1回、このサラリーマン(など)の日常生活に関する調査「サラリーマンのお小遣い調査」(※)を行い、その結果を報告書として発表している。今回はその最新版にあたる、2022年6月に発表した「2022年サラリーマンのお小遣い調査」の結果などを基に、直近、そして近年におけるサラリーマンのこづかい事情を確認する。
直近分も含むここ数年における、回答者年齢階層別のサラリーマンのこづかいの実情は次の通り。
全体としては前年に続き減少の動きにあり、前年比マイナス68円の3万8642円。報告書では「近年の男性会社員のお小遣い額の推移は増加と減少を繰り返し、金額で大きな変化は見られません」と説明している。後ほど示す中長期的なグラフからも分かる通り、調査の限りでは2011年以降はほぼ横ばいを維持しており、2022年の前年比での減少も、誤差領域の動きとの解釈ができる。
金額そのものは30代がもっとも大きく4万149円、次いで50代の3万9523円、40代が3万8049円、そして20代の3万6792円と続いている。
前年比は次の通り。
前年比では40代と50代で増加、20代と30代で減少。特に20代の減少度合いと40代の増加度合いが大きい。20代は過去2年間連続して大きな増加を示しており、その反動があったものと思われる。40代と50代の増加も、前年の大きな減少の反動だろう。
数年来続いていた傾向だが、20代から50代のサラリーマンでは、給与が一番少ないはずの20代ではなく、30代か40代の中年層が一番、こづかいの額面では小さな値を示していた。子供がいる世帯が多く、家計内でのやりくり事情の影響だろう。しかし2022年では20代のこづかいが前年比で大きく減少したことで、一番小さい結果となってしまっている。
既婚と未婚で区分すると未婚者の方が平均こづかい額は高い。グラフ化は略するが、未婚者全体では4万5549円、既婚で子供無し・共働きでは3万6449円、既婚で子供あり・専業主婦では3万6323円にまで額が減る。同時に付き合いも増え半ば強制的な出費もかさむこの年齢階層には、お財布事情が厳しい時代のようである。
余談ではあるが、公開されているデータを基に、毎年のサラリーマンのこづかい状況の推移と、日経平均株価(年末の終値、2022年は6月24日終値)をかぶせると次のようなグラフが完成する。
グラフの形状、さらには過去の調査報告書でも指摘されていたが、1991年以降のバブル崩壊後においては、サラリーマンの平均こづかい額は日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示していた。これはまさに景気対策・政策の実行と、その成果が民間ベースにまで浸透するタイミングと近いもので、興味深い傾向でもある。
もっとも2011年以降は日経平均株価が上昇傾向にあるにもかかわらず、サラリーマンの平均こづかい額はほぼ横ばいの傾向に。連動性が薄くなったのには、何か理由があるのだろうか。子育ての経費がかさむようになった、サラリーマンの世帯内での社会的立ち位置が弱くなった、例えば携帯電話代のようなこづかいとは別あつかいの別の支出が家計から生じているなど、色々と理由が考えられる。
2022年においては前年と比べて株価は下落し、つまり経済そのものは軟調さを見せていることになる。こづかい額は前年からわずかだが下落。連動して欲しくないと思う人は多いだろうが、連動してしまっている。減った理由を見ると(グラフ化は略)、「給料が減ったから」「生活費にかかるお金が増えたから」「新型コロナウイルスの影響で本業の収入が減少したから」が上位を占めている。給料の減少も生活費の増加も、新型コロナウイルスの流行が関係していることは容易に想像できることから、新型コロナウイルスの流行はこづかいの減少にも大きな影響を与えていると思わざるを得ない次第ではある。
■関連記事:
【マンガ、外食、異性との付き合い…大学生のこづかいの使い道、昔と今の変化を探る】
【プレミアムフライデーの導入は3.3%…働き方改革のサラリーマンへの浸透の実情をさぐる(2019年版)】
※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2022年分は2022年4月11日から18日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2712人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料で多くを占める会社員は男性1252人・女性842人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て。未婚・既婚比は男性が41.8対58.2、女性は60.1対39.9。なお今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は 【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。