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YCCの解除は急務なり、10年債利回りは再び0.505%と日銀のレンジを突破

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 21日の日本相互証券(BB)の取引で、10年369回債の利回りは日銀が上限としている0.500%を突破し、0.505%を付けてきた。これは日銀のオペでは売れずしかたなくBBで売ってきた可能性もあるが、イールドカーブコントロール解除の催促相場との見方もできる。

 ここにきて欧米の長期金利が再び上昇してきた。これは米国の雇用統計や消費者物価指数などを受けて、FRBが利上げを停止する時期が遠のいたとの見方が強まったことによるもの。これによって日本の国債利回りにも上昇圧力が加わった。

 それだけではない。日本証券業協会が20日発表した公社債の投資家別売買動向(短期国債を除く)によると、海外勢による1月の国債の売り越し額は4兆1190億円となり、過去最大となった。しかしこれが発表された際に市場は海外勢の過去最大の売越額よりも、生損保が超長期債を過去最大の4462億円売り越したことに驚いた。つまり生保がすでに日銀の政策修正を睨んで動いていたことが明らかとなった。これを受けて国内投資家に動揺が走った可能性も否定できない。

 次期の日銀総裁は誰がなっても政策修正、特に市場の歪みを生むイールドカーブコントロールのYCCの修正・解除は急務となってきている。すでに指名を受けた植田氏もイールドカーブコントロールの修正に着手するのではとみられている。しかし、市場では4月までも待てないという状況となりつつある。その結果が0.505%の上限突破とみている。また、24日発表の1月の全国消費者物価指数は前年同月比で4%を超えてくると見込まれている、これが長期金利の上昇を後押ししてくる可能性がある。

 日銀は本来市場に委ねているはずの長期金利までもコントロール下に置いた。これがいかに無理があるのかを日銀自ら証明しつつある。日銀は早めに長期金利は市場にて形成されるという本来の姿に戻すべきであり、それは早ければ早いほど良い。市場と喧嘩すればするほど日本の債券市場や日本の債務の在り方そのものをおかしくさせかねない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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