東京市場はリスクオンのムードが強まり株価は上昇するなどしたが、足元の景況感の悪化にも注意が必要
トランプ米大統領は12日、中国との第1段階の貿易合意を承認した。15日に中国からの輸入品約1600億ドル(約17兆5100億円)相当に対して発動予定だった関税引き上げは見送られる(ブルームバーグ)。
米中の今回の協議については、土壇場でひっくり返る、いわゆるちゃぶ台返しの可能性も捨て切れていなかったが、どうやら合意に至ったようである。また、米国側は、15日の第4弾発動中止とともに、計3600億ドル分の発動済み追加関税のうち最大50%を削減することを中国に提案したそうである。
12日の米国市場では、米中協議の第1段階は合意かとの見方から、ダウ平均の上げ幅は一時300ドルを超え、過去最高値を上回る場面もあった。また、米債は売られ10年債利回りは一時1.92%まで上昇した。ドル円も109円台の半ばまで上昇するなど、いわゆるリスクオンの相場展開となった。
さらに13日の日本時間の朝方には、英国の総選挙の出口調査の結果が伝わり、BBCによるとジョンソン首相率いる与党・保守党が過半数を奪還する見通しとなった。実際に保守党が過半数を得れば、欧州連合(EU)からの離脱案や関連法案を単独で可決できる。これによって2020年1月末のEU離脱への道筋がつく。
これも加わって、13日の東京株式市場は朝方に日経平均は500円を超す上昇となり、債券先物3月限は一時152円を割り込んだ。
楽観的なムードが高まりつつあるものの、米中の関係についてはひとまずこれ以上悪化する可能性が交代しただけであり、英国についてもスムーズにEU離脱が可能となるのかは不透明でもある。
さらに注意すべきは、13日に発表された日銀短観がある。日銀が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断指数(DI)はゼロとなり、9月の前回調査から5ポイント悪化した。これにより4四半期連続の悪化となる。
日経平均と大企業製造業DIはトレンドが重なるケースが多い。しかし、日経平均をみると8月あたりから再び上昇トレンドを形成し、戻りを試すような展開となっている。これは米国株式市場の動向の影響、さらには円高圧力の後退などもあろうが、実体経済とはやや乖離して動いているようにもみえる。
米中の通商交渉と英国の総選挙という2つのイベントは、結果として金融市場にとっては好材料となった。しかし、これはあくまで不安材料が払拭されただけであり、このあとはあらためて足元の景気の後退にも注意が必要となろう。