「死ぬ前に本当のことを言って」と切りだした、旧統一教会の古参元幹部の発言から見えてくること
今、旧統一教会問題を取り上げる界隈で話題になっているのが、旧統一教会元幹部の阿部正寿氏の発言です。
昨年12月28日にTBS報道1930で放送された番組
最古参教団元幹部が初証言/安倍家三代と旧統一教会 (TBS報道1930)にて、御年85歳の古参幹部だった阿部正寿氏が「死ぬ前に本当のことを言って」と切りだして、教団の献金の実情などについて、衝撃的な発言がありました。
「献金問題を起こした元凶は、文先生です。献金を持ってこい。300億をもってこい。その金額はすごいです」と話します。
阿部正寿氏をご存じない方も多いと思いますが、番組内で紹介があったように、国際勝共連合の事務総長などを歴任してきた元幹部で、日本武道館で行われた1970年の世界反共連盟(WACL)の世界大会では責任者をつとめていました。ちなみに、この大会の推進委員長は岸信介元首相です。
当時の大会の様子は、筆者が元信者時代に、ビデオ映像で見たくらいですが、この世界大会については、統一教会の歴史の講義で信者らに話した覚えがあります。ある意味、教団の伝説的な出来事にかかわっていた人物です。
筆者など赤子同然
阿部氏は、日本で初めて行われた1969年の文鮮明教祖による合同結婚式に参加しています。これは12双(組)とも呼ばれており「当時の信者数は200人ほどだった」ということです。
これは筆者が4歳の頃の話であり、92年の合同結婚式に参加した筆者や、教会改革推進本部本部長の勅使河原本部長など、彼からみれば赤子同然です。今、宗教2世といわれる人たちは、孫どころか、玄孫(やしゃご)信者といっていいかもしれません。
今の日本の旧統一教会の土台を作ってきた方で、現信者にとって仰ぎ見る感じの方です。その方の発言ですから、しっかりと耳を傾ける必要があります。
阿部氏は話します。
「(文鮮明教祖による)脅し文句はすごいです。もし日本が献金をまっとうできなかったら、日本は滅びる。だから借金してでも、何を打ってもそう(献金することに)なる」
確かに、筆者が入信した87年頃「日本が使命を果たさなければ、日本は沈没する、滅びる」などといっている、過去の講義ビデオを見させられた記憶があります。その元はやはり、文教祖の言葉であったことが分かります。
「一方では、心の中でこの人(文鮮明教祖)は相当反日だと思っていました」
教祖の言葉の端々にそういうものがあったといいます。
「日本は魚の釣り場所にしたらいいんだ」
これは多くの信者を獲得して、献金を巻き上げる場所にしたらよいという意味だと筆者は捉えています。
「『日本の国民は多すぎるから5000万(人)くらいにしたらいい』とか、日本を軽視するような発言ばかりするわけ」と続けます。
どれだけの日本の人たちが、教団の思惑によって多額のお金を取られて被害に遭ったことでしょうか。選挙応援などを受けて当選して、教団の思惑に沿った政策を行おうとした政治家がいれば、猛省しなければなりません。
本当に日本人をコケにしている。私は許せない
しかも、文教祖が亡くなっていても、実権を握っているのは、韓国人の幹部であり、日本への姿勢は変わらないとしています。
「日本人が金を出して、それを使うのは韓国人。自分たちが作ったお金ではないから、湯水のように使うんです。本当に日本人をコケにしている。私は許せない」
さらに「日本の超党派で調査団を韓国に派遣すべき。そして実態を調査すべきです。献金の実態を」と訴えていました。
今、信者らから高額献金されたお金の流れなどが注目されている時期ですので、徹底した調査は大事なことです。番組として、今の時期に貴重な内容を流してくれたと感じています。
「教祖として尊敬」の真意
ただし、おやおやと思う部分もありました。
阿部氏は発言の中で「文先生」をつけていたので、ちょっとおかしいなと思って見ていましたが、案の定「もちろん(文鮮明)教祖として尊敬しています」との発言が出てきました。
「献金問題を起こした元凶は、文教祖」といいながら、一方で「教祖として尊敬しています」と話す。一般の方には理解できないと思いますが、これは教団の思考パターンとしてよくあることです。
たとえば、よくいわれたのは「『カラスは白い』とアベル(神に近い上司)がいったら、『白なんだ』と信者は信じなければならない」ということです。
しかし実際には、カラスは黒いわけです。それが現実です。しかし「カラスは白い」と思って、行動しなければなりません。このように信者の心には、いつも相反する矛盾した思いを持って、信仰生活を送らざるを得ないことが多くあります。
カード摂理の矛盾
今、教団が過去に行ってきた、カード摂理というものも話題になっています。
これは文鮮明教祖の「借金してでも献金しろ」との言葉を通じて、信者らに教団はカードローンなどでお金借りて献金させる摂理を始めました。当時、筆者も献身(出家信者)していましたので、教団側から給与明細を渡されて、お金を借りに複数の金融機関に行くように指示されました。
そして借りたお金を献金として、所属していた部署に渡しました。
その後、あるアベルを通じて、次のようなことを言葉も講話で聞いています。
「文先生に、日本のある幹部が『もう日本人の多くが借金して、もうこれ以上の献金はできません』と言ったところ『だれが借金をしろといったんだ!』と激怒されたのです。まさか『それは文先生がおっしゃったことですが』とは誰も口にできなかったので幹部たちは押し黙りました」
しかし次のように続けます。
「しかし、これが大事なのです。ここには、メシヤの言葉としての深い意味があるはずなのです。それを祈りを通じて深く悟ることこそ、何より大事なのです!」
しかし祈っても答えはでません。なぜ矛盾したことを教祖がいうのか。悟れない自分が悪いと、信者らは思うようになります。
最後は開き直ります。
「頑張れば、もっと献金ができるはずなんだ。それをお父様(文鮮明教祖)は言っているんだ」
信者はそう思い込み、限界に挑戦して、必死のお金集めの活動をすることになります。
このように、まったく相反するものを心の中で受け入れて行動することは、信者にとって日常の生活の一部といえます。
長年、信じていた教義と文教祖ですから、そういう言葉が元幹部から自然に出てくるのは仕方がないと思います。逆に、率直に自分の気持ちを話しているとさえ思いました。
三つの約束
ネット上の番組動画では、総理になった暁には「大統領官邸にいくのではなく、文鮮明先生の自宅に挨拶にいきなさい。それと日韓トンネルを応援しなさい」などの三つの約束を、安倍晋太郎氏(安倍晋三元首相の父)と文鮮明教祖はかわしていたということです。
この辺りは、当時アベルから聞いていた話と一致しています。
ただし、三つの約束の2つしか放送されていなかったようです。
もう一つが何かは気になるところですが、中では「当時の久保木修己・統一教会会長を副総理にする」約束もあったという、とんでもない話も聞いていますが、さてその辺りの真相はどうなのでしょうか。
おそらく阿部氏は教団の政治関連団体にいたこともあり、教団のイベントに参加していた政治家へのお金の流れについてもよく知っていると思います。
もちろん「日本の超党派で調査団を韓国に派遣すべき」との提案もとても大事ですが、自らが知る、政治家へのお金の流れの実態も、公の場でつまびらかにしてくれることを切に願っています。
今後は、私のような旧統一教会最盛期の元信者だけでなく、旧統一教会の元幹部からの批判や赤裸々な実態が、今の教団に致命傷を与えていくことになると思います。