2013年のゲーム機たち
来週、2013年2月20日(現地時間)。ニューヨークでプレイステーションの次世代機が発表される。北米市場でシェア争いをする、プレイステーションとXbox。両機の戦いに関心は集まるだろう。ちなみにマイクロソフト、Xboxの次世代機は6月開催のビジネスショー、E3(Electronic Entertainment Expo)で発表される見込みだ。Xbox360は2005年、プレイステーション3は2006年に販売を開始した。時が過ぎて今年は、両機ともに世代交代の年にあたる。
だが、今年は過去とは違う。過去に例を見ない一年でもある。
2013年は今まで現役で活躍してきたハードの次世代機だけではない。ゲーム機ビジネスに、多数のメーカーが新規参入する。以下、新型ハードを関連動画とあわせて列記した。
OUYA
ウーヤーと読む。アメリカのベンチャー企業、OUYA社が開発した。先週、「6月発売」が決定。予約を開始した。本体とコントローラ1個のセット価格は99ドル。オープンソースのAndroidを採用し、ソフトの開発費を抑える方針を打ち出している。ユーザーにもゲームを「基本無料」で提供する。アメリカのクラウドファンディングサービス、Kickstarterで過去最高額の資金を調達した。
Gクラスタ
Gクラスタは小型装置をテレビとWi-Fiに接続。ソフトをダウンロードすることなく、サーバーにアクセスして遊ぶ方式、いわゆるグラウドゲーミングサービス用の機器である。昨年9月に行われた東京ゲームショウに出展した。フランスの大手通信会社、SFR社、およびフランステレコム社を母体とするGクラスタ・グローバル社が発売。日本ではブロードメディア株式会社が販売元となる。今春発売予定で本体価格は1万円以内とされる。
GameStick
スマートテレビ用のゲーム開発の先駆的な企業、ロンドンに本社を置くPlayJam社が開発。特徴は形状で、ゲーム機本体をメモリスティックサイズにした。同機をテレビのHDMI端子に差し込み、インターネット経由でソフトをダウンロード。付属のワイヤレスコントローラで遊ぶ。Android搭載機。79ドルで販売予定。OUYAと同じくKickstarterで資金を調達した。
Xi3 Piston
PCゲームのダウンロード販売&オンラインコミュニティとしては世界最大規模のSteam(スチーム)。Steam内のゲームをテレビ画面で遊ぶためのハード開発構想は以前からあり、「スチームボックス」と呼ばれた。Steamを運営するValve(バルブ)社と提携したのは、Xi3社。「グレープフルーツサイズ」と形容される超小型PCのメーカーである。
Atlas
スマートフォン、タブレットPCをテレビに接続し、機器にインストールされているソフトをワイヤレスコントローラで操作するシステム。『ギターヒーロー』の制作者・チャールズ・フアン氏らが設立したメーカー,Green Throttle Games(グリーン・スロットル・ゲームス)が開発を進めている。
他に携帯ゲーム機では、NVIDIA(エヌビディア)社が開発するProject SHIELD(プロジェクトシールド)、マニアックだが、ゲームの細部をカスタマイズしたり、自作ソフトを遊ぶことができたりするGCW-Zeroのような製品もある。
Project SHIELD
GCW-Zero
これら製品はニッチマーケット狙いで、プレイステーションやXboxほど普及することはない。
だが、製品をうみだした背景が今日的である。過去とは違い、未来の写し鏡のようである。
どの新型機種にも共通していえることは、パッケージソフトを使わない点だ。物理メディアを販売するためには流通網をつくらなくてはいけないが、ダウンロード販売、ストリーミング再生ならば、営業マンも店舗との契約書もいらない。ネットワーク環境の変化が、ゲーム機ビジネスの門戸を開いた。
クラウドファンディング(Kickstarter)の登場によって、資金調達の道が開けた。これまで巨額投資が必要だったゲーム機開発が、スタートアップ企業でも参入できるようになった。
ゲーム専用機を製造するには、同時に独自OSを開発することになるが、バージョンアップを重ねたAndroid、またはリナックスといったオープンソースを採用。このことが開発費を下げ、開発期間を短くし、他のプラットフォームからソフトの転用をしやすくした。
ゲーム機の分野でも「メーカー」になることのハードルは、数年前に比べて格段と低くなった。
冒頭でゲーム機ビジネスに、多数のメーカーが「新規参入する」と書いたが、厳密にいえば多数のメーカーが「新規参入できる」時代になったのだ。
さて、来週発表されるプレイステーション、6月には発表されるXboxの次世代機。
クラウドゲーミング、マルチデバイス、フリー・トゥ・プレイ(基本無料ソフトの提供)といった時代の流れを、どの部分を受け入れ、どの部分を逆らうのか。その立ち位置に注目している。