現実となる?北朝鮮のミサイル飛来に備えたハワイ、韓国、日本での避難訓練
北朝鮮にまたミサイル発射の動きがある。発射されるミサイルが中距離弾道ミサイル(IRBM)なのか、それとも大陸間弾道ミサイル(ICBM)なのか、あるいは潜水艦弾道ミサイル(SLBM)なのかまだ特定されてない。
(参考資料:北朝鮮の韓国提案黙殺はICBMか、SLBM発射のため!)
明日27日は、朝鮮戦争休戦協定記念日であるが、北朝鮮はこの日は対米戦勝記念日と位置付けている。発射するとすれば、明日の可能性が高いが、天気が良ければ、今日の発射もあり得る。最近でも5月21日の「北極星2型」は午後5時頃に発射されている。
米紙ワシントンポスト(7月25日付)によれば、米国防総省は北朝鮮が早ければ来年にもICBMで米本土を実戦打撃できる能力を保有するとみていると伝えているが、北朝鮮の労働新聞(7月23日付)は5月に発射された中長距離弾道ミサイル「火星12」で米太平洋軍司令部のあるハワイやアラスカの攻撃が可能で、7月の「火星14号」と称されるICBMも「米心臓部を打撃できる核攻撃能力を世界に誇示した」と喧伝している。
どちらにせよ、米太平洋上の米軍基地であるグアムに続いてハワイが北朝鮮のミサイルの標的にされているのは疑いの余地もない。米本土も時間の問題である。北朝鮮のICBMが米国にとって現実的かつ、死活的な脅威として浮上していることは米国民の81%が「脅威に感じている」(7月18日、ワシントンポストとNBC放送の共同調査)と答えていることからも明らかだ。
北朝鮮のICBM発射成功により危機感を持ったハワイ州は北朝鮮の核ミサイル攻撃に備え、住民退避訓練を11月から実施することになったと伝えられている。仕事始めの日に月一回、実施される。日本軍によって真珠湾を奇襲攻撃されたハワイ州が敵国の攻撃に備え非常退避訓練を実施するのは米ソ冷戦終結後初めてである。ハワイ州は住民に過度のステレスを与えないため慎重を期していたが、万一に備える必要があるとの判断から訓練の実施を決めたようだ。
米ハワイ州の緊急事態管理局はすでにミサイル着弾に備えた対応指針を策定しているが、最悪のシナリオとして北朝鮮が15キロトンの核兵器を中心都市ホノルルの上空約300メートルの地点で爆発させた場合に備えた訓練も実施される。
指針によると、訓練では通常のサイレンに続いてミサイル飛来を知らせる2度目の警報サイレンが鳴れば▲住民も観光客も一斉に建物に隠れる▲運転中の場合は車を停車させて、建物の中に避難するか、地面に寝そべる▲上空の閃光(せんこう)は見ない-などの対策を取っている。ちなみに北朝鮮のミサイルはハワイには20分前後で到達する。
米国はハワイだけでなく、韓国駐在の米国人の避難訓練も今年6月に実施したばかりだ。訓練は6月5日から始まり9日まで実施された。
駐韓米軍は毎年春と秋に朝鮮半島有事に備え韓国在住の米市民を安全な地域に輸送する「非戦闘員救出作戦(NEO)訓練」を行っているが、昨年秋の訓練までは国外への脱出訓練はなかった。
旅券など書類を持ってソウルの龍山基地など韓国全土に散在している集結場所や退避統制所に集まる大使館員や米軍家族非戦闘員要員らを航空機や鉄道、船舶で安全に日本に退避させることが退避訓練の主たる目的である。
ソウル市龍山区にある米軍基地で身元確認の腕輪を渡され、保安検索の手続きが行われ、生物・化学兵器による攻撃を12時間防止することのできるマスクの着用方法に関する訓練も受けていた。対象者は避難の際に一人当たり最大で27キログラムの所持品の持参が許されていた。
昨年秋に行われた訓練には約60人が参加したが、大型輸送ヘリで南方の京畿度・平澤に移動した後、大邱にある米軍基地で一泊して翌日C―130輸送機で釜山にある金海空軍基地から沖縄の米軍基地に運ばれてきた。
(参考資料:朝鮮半島有事に備えた在韓米国人の国外脱出訓練が始まった!!)
今年6月の訓練は大挙1万7千人の米国人が参加して行われた。韓国に居住している米国人は約20万人だが、およそ、十数人のうち一人が退避訓練に参加した計算となる。このうち、約100人以上が実際に輸送機で在日米軍基地に運ばれていた。
日本もすでにミサイル避難訓練を3月から秋田県男鹿市を皮切りに青森、山形、新潟、富山、茨城、愛媛、山口、福岡、長崎県内の地方自治体で実施中にある。
政府の避難訓練の要請に基づくもので「ミサイルが発射されたもよう」と防災行政無線放送が流れると、▲住民らは屋外にいる場合は、体育館など近くの頑丈な建物や地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)に避難▲近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せる▲屋内にいる場合には、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動することにしており、内容は基本的にはハワイと同じだが、ハワイと違うのは、北朝鮮のミサイルが半分の約10分で日本列島に到達することだ。
弾道ミサイルを想定したこの住民避難訓練、一言でいえば、戦前の空襲警報訓練と変わりはない。