平均通学時間は片道1時間強…大学生の通学実情をさぐる
大学生は下宿生活をするにせよ、自宅から通うにせよ、通学には少なからぬ時間を費やすことになる。それでは実態として、どれほどの時間を通学に要しているのだろうか。独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月に発表した「令和2年度学生生活調査」(※)などから、その実情を確認する。
大学生の修学時における生活様式は、居住空間の観点で区分すると「自宅(実家)」か「下宿(広義の意味で)」に区分できる。そして「下宿」は「学(生)寮」「下宿(狭義の意味で)」「アパート」などに分類が可能。そこで大学へ修学する回答者を「自宅通学者」「学寮通学者」「下宿やアパートその他からの修学者」に分け、それぞれの通学時間(片道)を尋ね、その平均値を算出したのが次のグラフ。自宅通いではおおよそ片道で1時間強、下宿では10~20分ぐらいの通学時間となる。
全般的に自宅通学者の方が通学時間は長い。全国平均で約66分。往復2時間強。東京圏・京阪神はさらに数分長く、片道70分前後。義務教育課程の小中学校、そして高校と比べて大学は数が少なく、学生が習いたい、修学したい分野で限ればさらに数は限られる。金銭的事情などで自宅から通わねばならない場合、通学時間が長くても仕方がないとの理由もあろう。今件は「平均値」であり、実際には片道1時間半、2時間、あるいはそれ以上かけて自宅から通う大学生もいることを考えると、その苦労には頭が下がるばかり。
他方「学寮」「下宿、アパートその他」は東京圏で20分前後、それ以外では10分台。東京圏で長めの結果が出るのは家賃事情によるところがあると考えられる(大学そばの賃貸住宅は家賃が高く、借りることが金銭的に難しい場合も多々ある)。一人暮らしを積極的に望む場合を除けば、距離的・通学時間的に自宅通学が難しいからこその下宿であり、可能な限り大学そばに住むのは自然の理(大学が自宅から遠いから一人暮らしを始めるにもかかわらず、下宿先が大学から片道1時間もかかるような人は「あまり」想定できない)。
地域別に見るとどの居住形態でも東京圏が一番長く、その他の地域は一番短い。これは直上でも触れた通り、大学近辺の住宅(家賃)事情が多分にあるものと考えられる。大学に近いところに住めればそれにこしたことはないが、立地条件がよい場所が多く、当然家賃も高く、お財布事情と相談すると近場の下宿は借りにくい次第ではある。
なお元データは時間の区分が行われており、いずれに該当するかで答えてもらっている。今件ではその結果を加重平均の形で平均値を算出したが、基のデータを用いて「通学時間が片道1時間を超える人」を計算した結果が次のグラフ。
自宅通いは全国平均で5割超え、東京圏ではほぼ6割。他方学寮や下宿では数%でしかない。ただし東京圏に限ると下宿・アパートその他では5%近くを示しており、東京の家賃の高さ、集中度合が改めてうかがい知れる形となっている。
自宅通学者と下宿通学者で比較すると、毎日往復で1時間半ほどの差が生じることになる。通学中に何もできないわけではないが、行動が制限されることに違いはない。もっとも金銭的に下宿学生は厳しく、アルバイトに従事しなければならない場合が多いため、行動の拘束の観点では自宅通学者と大きな違いはない。
ただし大学就学中に学べること、経験できることには大きな違いが生じる。家庭事情や選ぶ大学の専攻にもよるが、大学を選択する際にはこの点にも留意をしておくべきだろう。
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※令和2年度学生生活調査
2020年11月に大学院、大学学部および短期大学本科の学生(休学者および外国人留学生は除く、社会人学生は含む)の中から無作為抽出方法によって抽出された学生に対して調査票方式で調査されたもの。有効回答数は3万7591人。調査そのものは2年おきに行われており、現時点では2020年実施の結果が最新のデータ。
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