【日野市】人と野菜と共に12年。山本さん達がつなぐ、「七ツ塚ファーマーズセンター」の物語り
こんにちは♪ 東京都の"ど"真ん中で日野愛を叫ぶ、地域ライターのひのさんぽです(^^)
月一でお届けしている【祝☆ひので迎える周年祭 〜歴史と魅力を再発掘〜】シリーズ。今月は日野市の「都市農業」の在り方も伺える、農と暮らしをつなぐ「七ツ塚ファーマーズセンター」を深堀りします!
祝☆12周年。七ツ塚ファーマーズセンターって?
農業者と市民との交流の場として、2012年10月に誕生した「七ツ塚ファーマーズセンター」は、細長~い東光寺大根で有名な東光寺地区にあります。
ここでは「農の学校」という農業体験や料理教室を通じて、農業への理解を深めることができます。
他にも美味しい日野産の新鮮野菜や特産品などの販売、野菜たっぷりのランチが人気の「みのり處」は常連さんがあしげく通う人気スポット。多目的室や調理室もあり、市民の様々な活動・交流の場として利用されています。
隣接する七ツ塚公園からは子どもたちの元気な声が聞こえ、世代を超えたコミュニティの場として市民に愛されている場所です。
※ここには、古くから7つの古墳があると言われていたことから「七ツ塚」と呼ばれるようになったそうです。
365日、野菜や地域の人と共に生きる「山本さん」の存在
そんな市民の憩いの場でもある「七ツ塚ファーマーズセンター」の12年を語る上で、欠かせないのは「山本さん」の存在。
「七ツ塚ファーマーズセンター」のオープンから関わってきたNPO法人めぐみの代表山本さんに、12周年の特集としてお話をお聞きしました。
山本さんは日野市の出身ではなく、社会人になってから日野で暮らすという農業とは無縁の生活を送る会社員でした。
体調を崩し、会社を早期リタイアした山本さんは、自然とのふれあいを求め日野市の主催する「農の学校」へ通ったのだそう。都市農業を続ける地域農家の援農に携わるうちに気付いたのは「農家の人は作るだけで手一杯で、売る場所や売るための仕組みがない。」という現実でした。
「自分に何かできることはないか?」その問いに応える形で、山本さんは地元の農家を支援するNPO法人めぐみを2010年に立ち上げました。ちょうどその頃、日野市内では東光寺上地区の農を活かしたまちづくりの一環として、ファーマーズセンターを設置するプランが進んでおり、山本さんに白羽の矢が立ったのです。
2012年10月のオープン以来「七ツ塚ファーマーズセンター」を運営しながら、山本さん達は農家と行政と市民が一体となる架け橋として、12年に渡り様々な取り組みを行ってきました。
「七ツ塚ファーマーズセンター」に並んでいる野菜にはその野菜の説明や食べ方など、丁寧な説明が添えられています。
山本さん達は農家の方々が少しでも生産に集中できるようにと、毎日農家を回り野菜を買い取っているのです。袋詰めや値付けもスタッフと共に行い、新鮮な地元野菜を毎朝店頭に並べているのです。
通常「道の駅」の直売所では、農家の方が自ら袋詰した野菜を運び、値付けし、売れ残ったものは回収しに行くというスタイルが一般的ですが、山本さん達は12年が経った今も変わらず、毎日20〜30軒の農家を回っているのだそう。すごい!
残った野菜も無駄なく活用、美味しい野菜ランチに!
この買い取りという仕組みが成り立つのは、仮に野菜が売れ残ってしまっても店舗内にあるレストランで美味しい「日替わり野菜ランチ」に生まれ変わるから。
栄養たっぷりの地元野菜がランチになり、訪れる人々に日野の恵みを味わってもらえます。「せっかく作った野菜を大切にしたい。」という山本さん達の想いを感じますね。
「買い取り」というこの仕組みもさることながら、土と触れ合い一生懸命育てた野菜をアイディアいっぱいに調理し、野菜の仕入れと共に「美味しい」の言葉も一緒に届けていることも素晴らしい!
毎日の食卓を彩るお母さん達が腕によりをかけつくるご飯は、野菜の新しい食べ方の発見にもつながっているのだとか。「そんな食べ方もあるのね」と、野菜を作った人も驚く意外なレシピもあるそうで、「さすが毎日ごはんを作り続けてきた家族のシェフ! その日ある野菜からメニューを考えて作っちゃうんだから。」と、スタッフの料理の腕を褒める山本さん。
農家の悩みを、共に解決する地域のつながり
山本さん達はひとりひとりの農家さんの話に耳を傾け、時には励ましの言葉をかけ、そして時には課題を解決するアイディアを形にします。
「B級品」と呼ばれる市場では価値が低いとされる野菜たちも、山本さんの手にかかるとまるで宝物のように扱われます。
少し傷のついた野菜は市内のレストランや居酒屋のメニューに、ヒビ割れのある卵は市内のパン屋さんの材料に、「高い」と言われたいちごは地元の老舗菓子店の逸品に。こうして「B級品」は、地域のつながりによって価値ある存在へと生まれ変わるのです。
地域の農家の方々や自治体、そして市民もまた山本さんを信頼し、困ったときには真っ先に頼りたくなる存在となっています。
難しいことでも「よし、やってみよう。一緒にやろう。」と手を取り合い、山本さんと地域の農家が築き上げてきた信頼と絆が、今の七ツ塚ファーマーズセンターの温かさを支えているのでしょうか。
人と人をつなぐ「場所」
12周年イベントとして、2024年10月20日(日)には、七ツ塚ファーマーズセンターを利用している団体やグループの皆さんによる「みんなの発表会」が開催されたそう。発表する場があるというのは、普段この施設で練習を積んでいる方にとってはとても誇らしいことなのではないでしょうか。
観客席からも応援する家族や友人の温かい眼差しが絶えず、この場所が地域の「憩いの場」として根付いている様子がうかがえたといいます。
公園が隣接していることから、「アイスのバラ売り」を始めたところ、子どもたちに大好評なのだとか! おじいちゃんおばあちゃんが孫を連れて来ることもあるそうで、世代を超えた交流が生まれています。
七ツ塚ファーマーズセンターでは、地場のものにとどまらず様々な食材を販売しています。「少しでも力になれば」と、ここでも自分たちにできることを考え、実践している姿を見ることができました。
つらい状況にあったとしても、生きる力に勇気を与えてくれる取り組みです。
こんな風に、人や自然を思い毎日元気に市内を走り回っている山本さんですが、実は週に3回、透析に通っているのだそう。
「たくさんの人と会って話をして、働いて、夜に一杯のお酒を楽しむ。そんな毎日が何よりの喜びなんです」。透析による水分制限があるため、日中は水分摂取を控え、夜の「待ちに待った一杯」が特別な時間なのだと語ってくれました。
「自分はこんな体だけど、人に必要とされ、誰かの役に立つことができていることに感謝している。」
12年間、七ツ塚ファーマーズセンターは”農”と共に地域に寄り添い、暮らしの一部として日常に溶け込んできました。
日野の豊かな自然と人を思いやる気持ちを次の世代へとつないでいく。「一人ひとりが手を携え、日野の恵みを大切に守り、未来の子どもたちに残していきたい」という山本さんの思いが、日野のまちづくりを支え、輝かせ続ける原動力となっているのかもしれません。
七ツ塚ファーマーズセンター
日野市新町5-20-1
電話番号:042-586-6831
営業時間:午前9時~午後5時
休館日:年末年始(12月29日から1月3日)※場合により臨時休館日あり
駐車場:20台(無料)