母子世帯の平均所得は235万円…母子世帯や高齢者世帯などの所得状況を確認する
所得額で問題視されることが多い母子世帯や高齢者世帯。それらの世帯の所得の直近、及び中長期的動向はいかなる状況なのだろうか。厚生労働省が2015年7月に発表した平成26年版(2014年版)の「国民生活基礎調査の概況」を元に、その実情を確認していく。
次に示すのはいくつかのパターン別の年間世帯所得、そして平均等価可処分所得を確認したもの。
「平均等価可処分所得」とは、世帯の可処分所得(実収入から非消費支出(税金・社会保険料)を引いたもの)を世帯人員数の平方根で割って調整した値。単純に人数割りをした場合、同居する事による共有化のメリットが考慮外となるため、平方根で割ることで、より公平な比較が出来るようにしている。例えば4人家族で500万円の可処分所得なら、500万円÷√4=500万円÷2となり、250万円。これは1人暮らしの可処分所得250万円(250万円÷√1=250万円÷1=250万円)の世帯と大よそ同じ生活レベルと見なすことができる)
「全世帯」は今調査の調査対象母集団全世帯における平均。「高齢者世帯」とは65歳以上の人のみ、あるいはそれに18歳未満の未婚の人が加わったもので、例えば高齢世帯に18歳以上の人が加わり、稼ぎ頭が居そうな世帯は該当しない。「65以上の者のいる世帯」とは異なるので注意が必要。
「母子世帯」とは死別・離別・その他の理由(未婚の場合を含む)で、現に配偶者のいない65歳未満の女性(配偶者が長期間生死不明の場合を含む)、と20歳未満のその子(養子を含む)のみで構成している世帯。「児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯」とは異なるので注意。同様に「父子世帯」も存在し得るが、母体数が少数となるためか、今調査では実測値は収録されていない。
全世帯の平均所得は528.9万円。他方、平均等価可処分所得は281.1万円。これが高齢者のみの世帯となると300.5万円/215.6万円となる。単に高齢者が居るのみで、それより下の年齢(かつ18歳以上)の人が居る場合もある世帯では、働き手が居る可能性もあるため、所得などは高めとなる(464.4万円/264.9万円)。
一方、母子世帯は235.2万円/132.0万円。多分に共働きをしている世帯から構成されている、児童が居るだけの世帯とは大きな違いがある。
今件各世帯類型別に、所得及び平均等価可処分所得の推移を見たのが次のグラフ。なお母子世帯は客体数が少数のため、値にぶれが生じている可能性があることに留意を要する。
平均所得だが、全世帯は低所得世帯(主に高齢層がいる世帯)比率の増加に伴い漸減している。また「65歳以上の者のいる世帯」でも、高齢者世帯の割合が増えていることもあり、同じようなペースで減少している。一方、高齢者世帯や母子世帯、児童のいる世帯はバブル期崩壊後あたりをピークとして、前世紀から今世紀にかけていくぶん下げたあとは、ほぼ横ばいで推移している。所得に限れば全体的な減少は、低所得とならざるを得ない世帯の比率増加によるものであることが改めて把握できる。
他方平均等価可処分所得で見ると、ピークはほぼ同じ時期だが、ピークを過ぎた後の各世代の位置関係が、単なる所得とは微妙に違うことが分かる。全世帯平均と児童のいる世帯、65歳以上の者のいる世帯がほぼ変わらず、高齢者世帯がやや上となり、母子世帯が下に置いて行かれている形となっている。
全世帯の平均等価可処分所得を100%とした場合、母子世帯は47%(2013年)。1985年以降は大よそ40%強を維持し、50%を超えたことは無い。生活の厳しさが改めてうかがい知れよう。
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