高校生がネット犯罪に巻き込まれる!?
昨年、総務省から高校生のインターネットリテラシーに関する調査結果が発表されました。インターネットリテラシーを簡単に言えば、「どれだけインターネットを正しく使いこなせているか」という利用方法の正しさのことです。では、インターネットを正しく使うとはどういうことでしょうか。逆にどのように使っていれば正しいのでしょうか。総務省では2012年からインターネットリテラシーを調査する前に、何がインターネットリテラシーなのかということを定める事からはじめています。
その調査において、インターネット上のモラル、さらにその危険性・脅威への対応能力、そしてそれらを的確な判断するための能力を3つの大分類・7つの中分類に整理しています。また、これらの能力を測るためのテスト内容については、インターネットの新たな道具やサービスの登場、危険性の変化によって、原則毎年見直しが行われています。例えば5年前の平成23年度から調査が行われていますが、当時に比べてスマホの利用が急増したため、昨年、その利用に即したテスト内容に改められています。
以下に3つの大分類・7つの中分類を総務省の資料通りに記述します。
1.インターネット上の違法コンテンツ、有害コンテンツに適切に対処できる能力
a.違法コンテンツの問題を理解し、適切に対処できる。
b.有害コンテンツの問題を理解し、適切に対処できる。
2.インターネット上で適切にコミュニケーションできる能力
a.情報を読み取り、適切にコミュニケーションできる。
b.電子商取引の問題を理解し、適切に対処できる。
c.利用料金や時間の浪費に配慮して利用できる。
3.プライバシー保護や適切なセキュリティ対策ができる能力
a.プライバシー保護を図り利用できる。
b.適切なセキュリティ対策を講じて利用できる。
さらに簡単にまとめると、3つはそれぞれ、インターネットにおける「内容(コンテンツ)の正悪の判断」、「サービスの利用方法」、そして「(被害に遭わないための)危機管理」の能力という事になります。
これらの能力を測るための指標がILAS(Internet Literacy Assessment indicator for Students)と呼ばれるものです。このILASを使って、地域での啓発活動や、様々なサービスを安心・安全に利用するための方法の開発や改善に寄与することを目的としています。
調査自体は平成27年6月から7月にかけての調査期間であり、その調査結果をまとめると、概ね7割程度の正答率であり、リテラシーは必ずしも低くないものの、3割程度の生徒は、能力的に何らかの問題を抱えており、強いて言えば、3の危機管理能力が若干低く、犯罪等に巻き込まれるリスクが高いということが言えます。また調査の過程で、スマートフォン(スマホ)の利用状況についても調査し、9割以上の生徒がスマホを使い、平日には、1〜2時間、休日には2〜3時間利用している割合が一番多くなっています。スマホを使う時間が長い人ほど、睡眠時間が短く、その大部分をLINE等のSNSを使っているという結果が出ています。また、フィルタリング(インターネットで閲覧する内容を自動的に制限する機能)を利用している人ほど、さらに家庭内のルールがある人ほど、リテラシーが高いという結果が出ています。これはフィルタリングや家庭内のルールといったことは本質ではなく、家庭内でインターネットの利用方法を話し合う機会が多いほど、リテラシーが高いと見るべきでしょう。
学校での通り一遍の研修や授業ではなかなか成果が出難く、家庭内で適宜話し合う等、継続的にリテラシーを意識する事が、リテラシーを高める効率的な方法である事を物語っています。
本記事は、ZAQ連載の拙稿:森井教授のインターネットセキュリティ講座「第73回 高校生のネットリテラシーは高いか?」を加筆、修正したものである。