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ベースの拡大…内野シフト禁止…投手に不利なMLBルール改正の是非を考える

上原浩治元メジャーリーガー
内野守備の変則シフトはMLBのトレンドだったが…(写真:ロイター/アフロ)

 メジャーリーグ機構(MLB)と選手会が、報道によれば2023年のシーズンから内野のシフト規制、ベースのサイズアップ、投球時間制限(ピッチクロック)の3つで導入が合意したそうだ。マイナーリーグで実施に向けた試験導入を行ってきているようだが、私はいずれも反対(一部条件付き)の立場だ。背景にどうしても「投手不利」の改訂という印象を抱いてしまうからだ。シフト規制とピッチクロックはパワー偏重への抑制と試合時間の短縮が狙いらしいが、それなら「飛ばないボール導入」「球場のサイズ変更」「ストライクゾーンの拡大」を提言したい。

 1点目の内野のシフト規制では、二塁ベースを中心に、両サイドに内野手2人の形が採用される見込みだという。通常の守備はサードとショート、セカンドとファーストが二塁を挟んで2人ずつ配置される。しかし、左の強打者ならサードがショートあたりを守り、ショート、セカンド、ファーストはセンターよりもライト寄りにポジションを取る極端な守備陣形が敷かれることもある。強烈に引っ張る打球のヒットゾーンを狭める戦術だ。こうしたシフトは「王シフト」「大谷シフト」などと呼ばれ、強打者の証でもあるのだが、新ルールでは禁止になる。

 シフトは守備の陣形を変えるだけではない。バッテリーも配球を考え、守備網に打球が飛ぶように工夫する。打者のヒットゾーンについて、データを駆使して戦略が練られているのだ。シフトを敷かれた側の打者も、逆方向に打ったり、バントすれば簡単にヒットになる状況だが、自分の打撃フォームを崩すことを恐れてシフトの網を破ろうとする。こういうのは、ファンが見ていても興味深い駆け引きになる。極端な内野シフト禁止の背景には、シフトに左右されないために、パワーに頼って打球をフェンスまで運ぶ「フライボール革命」の浸透で、野球が「大味」になってしまうことに規制をかける狙いがあるそうだ。

 それなら、ボールを飛ばなくする対策のほうが有効なはずだ。物理的な課題をクリアしなければならないが、フェンス際などでフィールド部分を広くすることも効果的だろう。こうした対策を施した上で、ルールの範囲内で工夫するシフトはOKにしたほうが、攻防も白熱すると思うがどうだろうか。

 ベースのサイズアップも、報道によれば約38センチ四方のベースが約46センチ四方になり、塁間が10センチ前後短くなるそうだ。走塁や盗塁に有利に働く改正の背景には、塁上での衝突事故を減らす狙いがあるそうだ。わずか10センチとはいえ、きわどいプレーがセーフになるかもしれないというのは、投手の心理面に多少の影響を及ぼすだろう。クロスプレーに関しては防止に向けたルール整備がすでに行われている。ベースをサイズアップすれば、打者が駆け抜ける一塁ベースでは、逸れた送球を取る野手との衝突リスクが緩和されるかもしれないが、それなら一塁ベースだけを大きくし、塁間が変わらないように少し後方にセットすればいいのではないだろうか。ソフトボールのように一塁ベースを2つ置くという対応も審判のジャッジへの影響次第では、塁間を短くするよりはベターに思える。

 ピッチクロックは無走者の場合は14秒、走者がいる場合は19秒以内。報道をみると、試験導入したマイナーでは試合時間が約20分短縮されたそうだ。現役時代に投球テンポが速いと言われた私ですら、投球時間を制限されたくないというのが本音だ。投球間隔はサイン交換にてこずることもあれば、打者との対峙で〝間〟を置きたいことだってあるので一定ではない。試合時間を短縮したいのであれば、ストライクゾーンを広くするほうが有効的だ。広いストライクゾーンなら追い込まれたくない打者の早打ちにつながる。攻守交替も全力疾走と言わないまでも、もっとスピーディーに行うように時間制限を設ければ、試合時間の短縮に直結するはずだ。

 ルール変更に文句を言いたいわけではないが、いずれも反対の立場になるのは、投手にばかり不利に思えるからで、打者側の立場からのデメリットは見えてこない。合意した変更が覆されることはないだろうが、こうした流れはいずれ日本球界にも波及してくることが考えられる。「飛ばないボール導入」「球場のサイズ変更」「ストライクゾーンの拡大」も検討の余地があると思うが、皆さんはどう思うだろうか。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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