ドル円は149円台に。介入では止められない円安に
18日のニューヨーク市場でドル円は一時149円39銭と1990年8月以来、32年ぶりの円安ドル高水準を付けた。
9月22日に政府・日銀は1998年6月17日以来となるドル売り円買い介入を実施した。この際には2.8兆円規模の介入となり、その分の外貨準備を取り崩した。
9月22日のドル円は介入により、145円台から140円台までドル円は下落したが、140円台でブレーキが掛かった。その後は介入警戒も残り、恐る恐るドル円は上昇してきた。介入効果は皆無ではなかったものの、結局、ドル円は介入時の水準を上回ってきている。
市場の流れの反対、いわゆる逆張りの為替介入はいくら政府日銀が行っていようが、流れを変えることはまず困難となる。円安ドル高の直接の原因となっているものを修正しなければ、流れの向きを変えることはできない。
ドル円の流れを決定づけているのは物価に対する日米の対応の違いとなる。米国は物価高に対応し、中央銀行であるFRBは積極的利上げを行ってきている。さらに米国にとり、物価上昇の抑制要因ともなるドル高を政府は歓迎している。
これに対し、日銀は物価目標とする消費者物価指数(除く生鮮)が前年比3%近くに上昇し、2%の目標を上回っているにもかかわらず、非常時で危機的対応のごとく、異次元とも呼ばれる金融緩和策の修正すら行っていない。
さらに政府は物価高対策として財政政策を行っているが、これは物価全体にみれば物価抑制策というより物価上昇要因ともなる。
日銀が異次元緩和で物価上昇を促すアクセルを踏んで、政府は介入でブレーキを掛けるという何ともチグハグな対応となってしまっている。このような対応では素直に円安が修正されるとは思えない。
英国では物価上昇時における減税策に対し、通貨のポンドととも英国債が大きく売られて警鐘をならし、トラス政権を追い込み、財務相は交代した。
日本でも通貨は売られているが、日本国債の利回り上昇は日銀が無理矢理押さえ込んでいる。これは財政ファイナンスそのものともいえるものとなり、日本の財政不安をみえなくさせ、英国のような事態は起きていない。しかし、状況はかなり似たものとなっていることにも注意が必要となろう。マグマは溜まりつつある。