北朝鮮の「闇病院」に追い詰められた、女子高生の究極の選択
「性暴力被害は女性の落ち度」という風潮のある北朝鮮では、未婚女性の妊娠、出産に対しても風当たりが強い。国からの支援も受けられず、生まれた赤ん坊を捨てたり、両親が密かに養子に出したりすることも少なくない。
また、深刻化する少子化対策として金正恩総書記は、避妊と妊娠中絶を禁止する命令を出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
そんな中、妊娠してしまった高級中学校(高校)2年生の女子生徒が自ら命を絶つ痛ましい事件が起きてしまった。咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
咸興(ハムン)市の沙浦(サポ)区域の高級中学校に通っていた2年生のAさんは、今年9月中旬、自分が妊娠したことに気づいた。相手の男性について情報筋が触れていないが、それそのものが「女性の落ち度」だと責める社会的風潮の現れと言えよう。
Aさんは中絶手術を受けるために、親友に妊娠したことを打ち明け、費用として10万北朝鮮ウォン(約1800円)を借りたのだが、彼女が誰かに話をしてしまい、噂がどんどん広がってしまった。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
前述したとおり、そもそも北朝鮮では、妊娠中絶手術が禁じられているのだが、現実には密かに行われている。ただ、知識と経験に欠ける医大生が学費稼ぎにアルバイトで請け負うことも多く、一種の闇病院――設備の整った病院ではなく民家で行われることから、死に至る深刻な医療事故も多いと言われている。
一方、咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋は「わが国(北朝鮮)では、未婚で妊娠すると犯罪者扱いされたり、後ろ指を指されたりする。人々は、そうして噂されることを恐れているのだ」と話す。
そんな状況だけに、女子高生はそれ以上、誰にも頼ることができなかったという。
クラスメートからは後ろ指を指され、教師からも白い目で見られるようになり、羞恥心に耐えかねた彼女は、結局自ら命を絶ってしまった。
このような10代の妊娠や、それで追い詰められた末の悲劇的な結末を何例も知っているというRFAの情報筋は、「幼い女性の妊娠に対する社会的認識が不足しているため、いじめられ、白い目で見られ、羞恥心に耐えかね、亡くなってしまった残念な事件」だと述べた。
また、そのような風潮を煽っているのは、まともな性教育を行わず、偏った思想教育を行っている当局だ。
RFAの情報筋は語る。
「わが国(北朝鮮)では、そうした問題を抱えてしまった少女を『社会主義遊び人風に染まり、奈落の底に落ちた悪い生徒』だと教育しており、救いの手を差し伸べるよりは追い詰めてしまっているのだ」