FRBの議事要旨を受け金融市場に激震が走る、何がサプライズだったのか
米連邦準備理事会(FRB)は5日、2021年12月14~15日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開した。
5日の米国株式市場はFOMC議事要旨公表後に売りが加速し、米10年債利回りは1.7%台に上昇した。6日の東京株式市場では日経平均は800円を超す下げとなり、日本の10年債利回りは0.115%と昨年4月6日以来の水準に上昇した。金融市場はいったいFOMCのどの部分に反応したのか。
12月のFOMCでは、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)の加速を決めた。今年1月から新規の資産購入額をこれまでの月150億ドルから月300億ドルずつに減らす。減額幅は11月に決めた2倍に拡大し、これによりテーパリングの終了時期は2022年6月から同3月へ前倒しされる。
パウエルFRB議長が会合後の記者会見で、インフレ率が目標の2%を大きく上回っていると述べ、利上げはテーパリング終了後とし、テーパリング終了から利上げまで、それほど長い時間の遅れはないだろうと述べていた。
今回発表された議事要旨には「参加者は概して、経済や労働市場、インフレについての個々の見通しに基づきフェデラルファンド金利(政策金利)を参加者の従来想定より早期に、あるいは迅速に引き上げることが正当化される可能性があることに留意した」と記された。
前回のテーパリング終了(2014年10月)から利上げ(2015年12月)まで、かなりの時間を掛けていたが、今回はテーパリング終了からそれほど時を置かずに利上げを行う姿勢を明確化した。市場では3月のFOMCで利上げかとの見方が強まりつつある。
さらに市場が驚いたのは、議事要旨において、ほぼすべての参加者が、最初に利上げした後のある時点で、バランスシートの縮小を始めるのが適切である可能性が高い、との考えに同意したと記されていたことである。
利上げ以上にバランスシートの縮小には時間を掛けるとの見方があった。実際に前回の2015年末の利上げ開始後、資産圧縮を始めるまで2年近くかかっていた。
FRBは予想以上の速さで正常化をすすめる姿勢を示した。これには一時的とみられていた物価上昇が一時的ではないとの判断とともに、雇用の改善も進み、正常化に向けた条件がそろったためともいえる。
本来であれば中央銀行の金融引き締め策をあまり良しとしない政権からの圧力も意識されるところだが、現在のバイデン政権はこのFRBの正常化の動きに対し、抑制どころかむしろ歓迎している節がある。
前FRB議長でもあったイエレン財務長官を通じての意思の疎通が図られている面もあろう。さらにバイデン政権の支持率低下の要因にインフレが挙げられており、バイデン政権としてもインフレ抑制が課題になっていることから、FRBの金融政策の正常化の後押しにもなっているとみられる。