日本はまだデフレなのか
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内閣府は29日、2023年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を公表した。足元の物価と賃金に上昇の兆しがみられるものの、デフレ脱却にはサービス価格と賃金のさらなる上昇が必要との論点などを示した(29日付ロイター)。
現在の日銀の主張と似たようなものとなっており、まさに歩調を合わせたようなものとなっている。そのなかでの物価に関する記述で、おかしな点をみつけた。
「物価の動向をみると、消費者物価・GDPデフレーターともに、アメリカやEUの物価上昇率を下回っている(第1-2-5図(1)、(2))。消費者物価については、日米欧もエネルギーや食料品の価格は上昇しているが、日本では特にそれ以外の財・サービスの伸びが弱いことが影響している」
図をみると確かに日本の消費者物価指数は米国やユーロに比べて大きく下回っている。しかし、これは2022年5月までのものとなっており、その後、状況はかわっている。むろん、経済白書を出すにあたって直近の数値までは採用が時間的に難しいことはわかるが、上記のコメントは現状に当てはまってはいない。
7月の消費者物価指数で比較すると、日本の総合が前年同月比は3.3%の上昇となっており、米国は前年同月比3.2%上昇と逆転していた。ユーロ圏の7月の消費者物価指数(HICP)速報値は前年同月比5.3%の上昇とこちらはまだ距離がある。
それとともに7月の日本の消費者物価指数の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数、いわゆるコアコアは前年同月比は4.3%の上昇となっていた。
ちなみに日本の消費者物価指数は政府の電気・ガス料金の抑制策と観光支援策「全国旅行支援」が共になければ、生鮮食品を除く総合が3.1%ではなく4.2%上昇だったと総務省は試算している。
むろん、経済財政白書が書かれたタイミングというのも影響しているが、物価をみる上での前提がおかしなものとなれば、内容にも影響してこよう。
デフレ脱却にはサービス価格と賃金のさらなる上昇が必要との趣旨だが、日銀はデフレ脱却の大きな目安に消費者物価指数(除く生鮮)の前年比2%を目標に掲げていた。すでにその数値は2022年4月から2%を超えたものとなっている。
サービス価格や賃金も上昇しつつあり、少なくとも「デフレ」という言葉が現状を示すものとは言えないことも明白となっている。そのなかにあって、金融政策を緩和方向にしかみていない日銀の金融政策の異常さが際だってきている。今回の経済財政白書をみても、日銀のその姿勢をフォローしているようにしかみえないのだが。