いまこそ「リファラル採用」に取り組むべき理由 テレワークで社員の絆が薄まってしまう前に
■働く人のメンタルヘルスは悪化している
大変悲しい話ですが、2020年の自殺者はリーマンショック後の2009年以来11年ぶりに増加し、前年比3.7%増の2万919人にのぼったとのことです。コロナ禍により、経済的にも精神的にも被害を被った人が続出したからではないかと言われています。
ここまでいかなくとも、いろいろなマイナスの影響を受けて、「コロナうつ」(俗語であり一般的な病名ではありません)が増えていたり、この不景気下において転職希望者が増えていたりと、働く人の心は不安に押しつぶされそうになっていることが窺えます。
■「絆」維持の特効薬は見つかっていない
さらに、コロナの感染防止のためにテレワークが急速に進化したことで、社員の間の絆が弱体化してしまい、この不安をさらに増長させている可能性があります。
顔を合わせて仕事をしていたときには、誰かが不安そうにしていたら声をかけあっていたわけですが、離れて仕事をしていてはそういう機会も激減し、知らないうちに仲間の誰かが壊れてしまっているかもしれません。
テレワークで働く人がどんな気持ちでいるかについての調査などをみても、「さぼっていると思われている(思っている)」「重要な情報を得られていない」という疑心暗鬼が生じており、周囲への信頼感の喪失窺わせます。
このような状況を受けて、企業の人事担当者たちは「オンライン雑談をする場づくり」「上司との1on1ミーティングの強化」「メンター制度の導入」「パーソナリティテストの導入による相互理解の促進」などによって、なんとかしてこれまでと同じような社員間の絆を維持し、醸成しようとしています。
しかし今のところ、これといった特効薬は見つかっていないのが現状です。さらに、これまであった絆ですら薄れてきているのに、何の関係性も持たずに入社してきた新人や転職者が、オンラインだけで強い絆を作り出すことが難しいと感じるのは当然です。
■「すでに絆ができている人」を採用するメリット
そこで、社員や内定者の人的ネットワークをたどって行う「リファラル採用」に、あらためて期待が集まっています。もともと社員の知り合いであれば、すでに何らかの信頼関係や絆を持った人であるはずだからです。
大学の同級生、前職の同僚など、過去のどこかで長い間付き合って、お互いを知っている人が入社してくれたら、信頼関係を構築するのにこれほど早いことはありません。
例えば大学のクラブ・サークルの先輩後輩であれば、会社での人間関係より濃い付き合いをしていることもあります。こういう関係性は何年も会わなくても途切れないぐらいですから、テレワークしたぐらいで簡単に崩れるものではありません。
リファラル採用のメリットは、個人の側からも当てはまります。採用のオンライン化で、就職/転職希望者は内定をもらっても、情報量や信頼関係の不足から「本当にこの企業で良いのだろうか」と悩む人が増えています。各社人事の皆さんも、このままでは早期退職が増えるのではないかと戦々恐々としています。
それが、もしリファラル(紹介)で就職/転職したのだとすれば、すでに十二分に知っている仲間がいるわけですから、不安は軽減されます。入社後も、紹介者がいろいろフォローしてくれることでしょう。
■絆があるうちに取り組んでおきたい
このように、企業と個人双方にとって有益な「リファラル採用」ですが、なかなか簡単には成功しない手法でもあります。成功のための細かい工夫は拙著『「ネットワーク採用」とは何か』をご覧いただければ幸いですが、成否を分ける根幹は「社員と会社との間に絆があるかどうか」です。
会社を信用しているからこそ、自分の大切な知り合いを紹介するわけですが、会社への信用というのは、とりもなおさず、社員同士の絆から生まれてくるものです。今後どんどん絆を失っていくと、リファラル採用ができなくなってしまうことも考えられます。
つまり、リファラル採用を続けていけば、社員同士の絆がどんどん深まり、会社への信頼感も増え、さらにリファラル採用がしやすくなります。逆に、社員同士の絆が薄れていけば、リファラル採用という絆を強める必殺技はできなくなっていき、なんとか別の方法で絆を作り出すしかなくなってしまいます。
あるいは、社員の絆が不要な、機械的な組織の会社を作るかですが、そんな組織が簡単に成立するのかわかりません。例えば、リーダーがメンバーのやることを全部指示し、メンバーは与えられた仕事を黙々と頑張るだけ、というような組織ということになるでしょうか。
そんな会社を作るイメージがわかないのであれば、今できることの中で強力な一手は、やはり「リファラル採用の強化」でしょう。少なくともそれが可能な絆が残っているうちに試しておくことをお勧めします。絆が薄れてしまったら、もう取り組むことができないのですから。
※キャリコネニュースにて人と組織に関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。