全米プロ初日、予想外の展開が多い中、松山英樹の1オーバーの発進を、どう見る!?
今季2つ目のメジャー大会、全米プロが開幕した。
膝、腰、首などの故障続きで成績不振が続いているブルックス・ケプカが、いきなり3アンダー、69の2位タイで好発進したことは少々予想外。
ケプカ以上に不調が続いていて、今大会は特別招待で出場しているリッキー・ファウラーが1アンダー、71で好発進したことも少々予想外だった。
だが、最大の「予想外」は、このキアワ・アイランドが舞台だった2012年大会を圧勝し、今回も優勝候補の筆頭に挙げられているローリー・マキロイが、初日に3オーバー、75を喫し、77位タイと大きく出遅れたことだ。
それならば、マスターズを制したばかりの松山英樹が1オーバー、73の41位タイで発進したことは、どう見るべきか――。
【上々の発進!?】
初日。海風は強さも向きも一定せず、終始、難解で厄介だった。「バンカーだが、バンカー扱いではない」と規定されている砂地、不規則なバウンドを生む無数のマウンド、風に煽られたボールを飲み込む湿原は、いずれも名匠ピート・ダイが創り出した「人造ハザード」だが、その難しさはグリーンの四隅に切られたぎりぎりのピン位置と相まって一層厳しさを増していた。
スタートホールとなった10番で第1打をいきなり湿原に落としたマキロイは、ショットもパットも噛み合わないゴルフとなり、3バーディー、6ボギーと苦しんだ。
マキロイは、わずか2週間前にウエルスファーゴ選手権を制し、2年ぶりの復活優勝を遂げたばかりだが、そのホヤホヤの喜びが今大会への気負いとなってしまったようで、初日は空回り気味のゴルフになった。
日本の大きな期待を背負う松山も、悲願のマスターズ初制覇を遂げたばかりだが、松山のこの日のラウンドには気負いも空回り感も感じられず、4日間の出だしとしては、むしろ「上々だった」と言っていいのではないだろうか。
10番からスタートした松山は11番でバーディーを先行させたが、12番と18番は、どちらも3パットでボギーを喫した。1オーバーで折り返し、後半は2バーディー、1ダブルボギー。
ショットに「いいところはない」と振り返った松山は、「3パット2回、アプローチミスも1、2箇所。もったいなかった」と語ったが、逆に言えば、スコアを落としたホールは「もったいない」と感じる程度のミスに抑えることができていたということ。
マスターズ優勝後、帰国して隔離生活を経て、その後は、ひたすら喜びを噛み締めていた松山にとって、今大会は戦線復帰後、わずか2戦目だ。なかなかギアを上げられないのは当然であり、その状況下でミスの幅を抑え、「大きなミスをしなかった」ことは「上々だった」と言える。
マキロイとは対照的に松山のこの日のゴルフに「空回り感」を感じなかった理由は、攻めどころのパー5で、きっちりバーディーを奪うことができていたからだ。
ピンを狙ってミスをしたら大きな代償を払わされるキアワでは、大半のホールでピンを狙わずグリーンのセンターを狙う地道な我慢のゴルフが求められ、「攻めるべきは4つのパー5だ」と選手たちは口を揃える。
そんな中、マキロイは2ホール目の11番こそバーディーを奪ったものの、残る3つのパー5はすべてボギーを叩いた。それは、攻めた結果、裏目に出た「空回り」だった。
一方、松山は16番こそ逃したものの、11番、2番、7番でバーディーを奪った。ショットに冴えが無いと感じながらも4つのパー5のうちの3つでしっかりバーディーを奪い、攻めどころを逃がさなかったプレーぶりは、エンジンがかかり切らない中では「上々だった」と言えるだろう。
さらに言えば、スコアや順位より、首位から「そんなに離されることなく終わったので良かった」と前向きに受け止めている姿勢には、メジャーを制覇したチャンピオンらしい余裕さえ感じさせられる。(注:松山のホールアウト時点では首位とは4打差、最終的には6打差)
大きなミスをしなかったこと、4つのパー5で3つスコアを伸ばしたこと、首位との差は大きくないとポジティブに受け止めていること。
この3つを持ってすれば、松山の初日は「上々だった」と言っていいのではないだろうか。そして、2日目以降の巻き返しに大いに期待できる。