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米国株式市場ではダウ平均が50年ぶりの10営業日連続下落

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 18日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が10営業日連続で下落した。10日続落は1974年以来、50年ぶりとなった。

 今回、ダウ平均の下落が始まったのは12月5日からである。12月4日にダウ平均は初の45000ドル台乗せとなり、達成感が出たことなどからの利益確定売りがまず入ったものと思われる。

 このタイミングで米国の長期金利が再上昇してきたことも影響した。

 米10年債利回りは11月14日の4.45%が目先ピークとなり、その後は低下基調となっていた。12月6日には4.1%台に低下したがここが目先のボトムとなったのである。

 6日に発表された11月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比22.7万人増と予想を上回った。失業率は10月の4.1%から4.2%に上昇、平均時給の伸び率は予想を上回った。

 FRBのボウマン理事は政策金利の引き下げは緩やかかつ、慎重に進めたいと述べた。このあたりから米債の地合が変化してきた。

 11日に発表された11月の米消費者物価指数は、前年同月比の上昇率が2.7%となった。市場予想通りではあったが、2か月連続で加速。

 12日に発表された11月の米卸売物価指数は前年同月比3.0%上昇と前回の2.6%上昇から加速した。

 米雇用の改善とともに物価の高止まりが意識されてきた。これを受けて来年に入ってから、FRBは利下げをいったん停止するのではないかとの観測が強まった。

 米長期金利は上昇を続け、17日にはFRBが来年の利下げに慎重姿勢を示したこともあり、4.5%台に上昇していた。

 また、米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの株が大きく下落していたことが、ダウの下落要因ともなっていたのである。

 4日には保険会社ユナイテッドヘルスケアの最高経営責任者(CEO)だったブライアン・トンプソン氏が投資家向け経営戦略説明会の当日朝にニューヨーク・マンハッタンで射殺された。

 犯人の手記には保険業界に対する批判が記されていた。保険金請求の拒否件数増加や薬価・医療サービス価格の高騰は社会問題になっていたこともありこの事件を機に不満が噴出し、それが株価にも影響した。

 50年ぶりの10営業日の下落が何を意味するのか。たまたまであったのかもしれないが、株価指数が最高値を更新するなどしていたこともあり、FRBの来年の利下げ停止観測などもあり、いったん達成感が強まることも予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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