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暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXの破綻はチューリップ型なのでは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 世界的な暗号資産(仮想通貨)交換業者であるFTXトレーディングが経営破綻した。負債総額は数兆円規模とされ、急成長する仮想通貨ビジネス界で過去最大の破綻劇となった。連鎖的な経営悪化への警戒から「仮想通貨界のリーマン・ショック」と指摘されるが、2001年のエンロン事件のような巨額不正会計の色彩もある(14日付日本経済新聞)。

 暗号資産の交換業大手、FTXトレーディングは11日、自社と日本法人を含むおよそ130のグループ会社が連邦破産法第11条の適用を米国の裁判所に申請し、経営破綻したと発表した。負債総額は推定で100億ドルから500億ドル近くになる見通しで、暗号資産業界では過去最大の破綻となる可能性がある。

 FTXは2019年に創業した。サム・バンクマン・フリード前最高経営責任者(CEO)は若きカリスマ経営者として注目を集め、多彩な暗号資産関連商品を開発して投資家の関心を集めた(13日付読売新聞)。

 状況が一変したのは11月2日。暗号資産専門のニュースサイトCoinDeskがFTXの財務面の問題を指摘したことが発端となった。FTXトレーディングでは、アカウントにある暗号資産で投機は行わないと約束していたが、その方針が守られていなかったようである。

 これを受けて、信用不安から投資家が一斉に資金を引き揚げる、金融機関で言えば「取り付け騒ぎ」が発生した。わずか9日で資金繰りに行き詰まり、同業による救済買収も破談になった。

 今回の件によって、バンクマン・フリード氏は、160億ドルの資産を数日でほぼ全て失ったとされる。さらに政策アドバイザーとしてのバンクマン・フリード氏の信憑性がズタズタになったとの指摘もあった。

 そもそも暗号資産(仮想通貨)交換業者は金融機関とはいえない。仮想金融機関ともいうべきものであり、今回の件をリーマンなどと比較することも現実的ではないのではなかろうか。

 暗号資産(仮想通貨)バブルそのものが、17世紀のオランダにおけるチューリップ・バブルに例えられていた。FTXの創業者バンクマン・フリード氏が160億ドルの資産を数日でほぼ全て失ったとされるあたりも、バブル崩壊劇そのものにみえる。

 暗号資産(仮想通貨)バブルが崩壊し、FTXトレーディングの経営破綻は、その崩壊をさらに促進させる大きなきっかけと言えるものではないかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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