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デジタルドルの可能性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のイエレン財務長官は22日のニューヨーク・タイムズ主催のバーチャル会議で、ソブリンデジタル通貨の発行を「中央銀行が検討するのは理にかなっている」と発言した。さらにデジタルドルは、米国におけるファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)面の困難に低所得世帯が対応するのを支援する可能性があるとの認識を示した(23日付ブルームバーグ)。

 カンボジアの中央銀行は昨年10月に、中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用を開始した。このデジタル通貨は日本企業の技術を採用したものである。中央銀行デジタル通貨は、カリブ海の島国バハマでも本格的な運用が始まった。

 そして、中国も昨年10月に、ハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。

 イエレン氏は今年1月の議会公聴会で、暗号資産(仮想通貨)に関わるマネーロンダリングやテロリストの利用等、犯罪に利用される点が課題だと指摘していた。

 これに対して、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)は、それ自体が法定通貨となるものである。

 ECBのラガルド総裁も昨年11月にECBが数年以内にデジタル通貨を創設する可能性を示唆していた。

 日銀は現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくとしている。

 フェイスブックが主導する暗号資産「リブラ」の管理団体リブラ協会(本拠地:スイス・ジュネーブ)は暗号資産と団体の名称を「ディエム(Diem)」に変更し、2021年1月に発行を計画していたが、いまだ発行されてはいない。

 ビットコインの価格動向が世間を賑わせているが、民間が発行している暗号資産(仮想通貨)などがデジタル通貨として利用される可能性は低いとみられる。

 しかし、中央銀行デジタル通貨システムについては既存の金融システムを維持した上で補完的に利用される可能性は否定できない。

 その目的のひとつにはイエレン氏が「簡易な決済システムや銀行口座へのアクセスを持たない国民はあまりにも多く、そうした面でデジタルドルが役立つ」と語ったように、銀行口座を持たない人たちによる利用等も意識されているとみられる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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