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高校生有権者の政治活動が一部容認へ。でも、有権者でない高校生の政治活動の全面禁止はおかしい。

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上
(写真:アフロ)

【昭和44年通知がやっと緩和される】

文科省が今月中に全国の学校に対して、高校生有権者の政治活動を放課後の一部や学外において認める通達を出すそうです。

18歳選挙権、高校外の政治活動容認…文科省案(読売新聞) - Yahoo!ニュース

学校外では原則解禁する一方、学校内では禁止または制限すべきだとしている。

通知案は、有権者生徒の学校外での選挙運動は「尊重する」とした。ただ、特定の主義や施策、政党を支持、または反対する高校生の政治活動は「無制限に認められるものではない」と記述。その上で、学校内では〈1〉授業、生徒会活動、部活を利用した選挙運動や政治活動は禁止〈2〉放課後や休日の校内活動であっても、施設管理やほかの生徒の学習に支障がないよう制限または禁止――と分けた。

出典:読売新聞より

ということです。

もともと、昭和44年の学生運動全盛期に当時の文部省は全高校生に対し、「公共の福祉の観点」から学外での政治活動を含む全活動の禁止の通達を行ないました。その通達が未だ撤回されずにのこっており、選挙権年齢の引下げにあたり見直しが進んでいました。この昭和44年通知は突っ込みどころだらけなのっで興味ある方以下のリンクよりどうぞ

昭和44年通達の内容はこちらより

【学校内での制限はそこそこ妥当】

ニュースでは「学校内では禁止または制限すべきだとしている」と、ネガティブな感じで書かれているが自分はそうは思わないです。

>>〈1〉授業、生徒会活動、部活を利用した選挙運動や政治活動は禁止

は妥当でしょう。授業・部活などはそれぞれ目的があるので、その時間の中で高校生が「政治活動」を行うことはおかしな話だろう。

例えば、授業中に「〇〇政策の実現を」と書いたハチマキを生徒がしていたら、はずさせることに違和感はない。

>>〈2〉放課後や休日の校内活動であっても、施設管理やほかの生徒の学習に支障がないよう制限または禁止

こちらの方は少し気になる。たとえば放課後に高校生が自分の主張を広めるための集まりを教室で行うことや、チラシを配ることなども制限されていく可能性があるということだ。

「そんなのは学外でやればいい」という意見を持つ方もいるのもわかる。しかし、すでに18歳選挙権や16歳選挙権がすでに実現している国の様々な調査によると、学校内で政治的な話を友達同士で、つまりは身近ないつものコミュニティで行うことが投票率向上につながるようだ。

学校の中で政治に関心が高く主張がある生徒が、周りの生徒にも政治への想いを伝えることは悪くない。

【問題は年齢制限。そもそも政治活動と選挙運動は違う】

しかし、緩和されても残る最大の問題点は、有権者にまだなっていない高校生の政治活動の制限は続くということ。

そもそも、日本では”選挙運動”と”政治活動”が明確に分けられている。

選挙運動・・・特定の選挙において特定の候補者・政党を当選(または落選)させるために行われる行動。選挙期間のみこの運動は認められていて、成人以上でないとできない。

政治活動・・・選挙運動を除く、政治的な一切の活動のこと。特に年齢制限などはない。

要は選挙に直接携わる運動は有権者の資格を得てからしかできないものと定めている。なので選挙権年齢が18歳以上となれば、18歳以上であればできるようになる。つまり、ここで明確に年齢で線引きをしているのである。

となれば逆に政治活動は何歳でも自由にしてよいということ。

であるのに、高校生はダメだということはおかしい。同じ17歳でも高校生はしてはだめで、進学せず働いている方はOKだということ。

そもそも、有権者であるまえに、誰も主権者であるのが民主主義。

その主権者が政治的な意見を発するなどの活動を制限することがおかしい。

昭和44年の通知の際は禁止の理由として「高校生の本分である勉学がおろそかになったり、まだ政治的教養を身につけていないこと」という趣旨のことがが書いてある。

その理由のままであればなぜそもそも選挙権年齢を引き下げ、有権者の政治活動を認めていくことになったのか説明がつかないだろう。

【まずは自分の身近な街の事から】

とはいえ、別に自分は全高校生が政治に対して意見を持ち、どんどん活動していくことが必要だと思っているわけではない。

が、政治に関心をもち、動く気になった人を行動を制限するのはおかしいと思う。

「政治に関心を持つ、投票にいく」ことの意義を教えているにも関わらず、本人の主体的な活動を制限しないでほしい。

自分が代表であるNPO法人YouthCreateではまずは身近な街のことに関心をもっていき、その街のことが政治につながっているということを実感してもらい、政治に関心をもってもらうという、ボトムアップのアプローチを行っている。

その中で、例えば昔自分が通っていた小学校の統廃合などの際に想いを高校生が発することは大いに意義があることだとは感じている。

最近、都立高校で行った出前授業では、「公園を街に作る」ことを題材のグループワークを実施したりしている。

参考:東京新聞:出前授業で高校生「選挙」学ぶ 選管職員が仕組みなどを紹介:東京(TOKYO Web)

緩和されたことは大歓迎だが、有権者のみの緩和にはどうしても疑問が残る。

政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙に立候補し敗れる。元岡山大学非常勤講師。元グローバルシェイパー東京代表。元中野区社会福祉評議会評議員

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