タリフマン・ショック 米中の通商交渉は暗雲垂れ込め、金融市場は不安定に
トランプ政権の貿易交渉を率いるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、先週の米中通商交渉で中国側が姿勢を後退させたと大統領に報告し、これが5日のトランプ大統領のツイートによる関税引き上げ警告につながったようである。
8日付け日経新聞によると、米国は協定の案文に、中国が国有企業への補助金制度の改革案を明記することで合意していたと考えていた。しかし中国は協定に明記せず、国内の法改正で対応すると後退したとみられる。ライトハイザー氏が、中国に強硬な姿勢を取るようにトランプ氏を説得したとされている。
貿易協議では知財権保護を含めた制度づくりなどをめぐり、米国がさらに厳しい要求を突き付けていることや、中国側が一度認めていた知財保護等に関する法的措置導入を撤回したことが背景になっているともされている。中国は先週北京で行った貿易協議で、新たな法整備などを必要とする協定には同意できないとの考えを示している。
ライトハイザー代表は、われわれは何らかの合意に向かっているとの感触を持っていたとも発言していたが、市場も今回の米中の通商交渉については楽観的な見方が広がっていたように思われる。しかし、ぎりぎりのところでちゃぶ台返しが起こっていた。これは以前の米朝首脳会談でも同様の出来事があったように思われる。
今後の動向は皆目見当がつかないものの、米国政府は中国からの輸入品2000億ドル相当に対する追加関税を10日に10%から25%へ引き上げる方針であり、中国の劉鶴副首相が率いる交渉団は米国との貿易協議のため、9日からワシントンを訪れる見通しとなっている。
交渉は継続されるものの、ひとまず関税は課すということになるのか。トランプ大統領は自らをタリフマン(関税男)と呼んでいるそうであるが、まさにタリフマンとしての本領を発揮し、東京市場を含めて世界の金融市場にタリフマン・ショックを引き起こした。
中国商務省は7日、劉鶴副首相が訪米し、9~10日に貿易協議にのぞむと発表した。9日のワシントンでの米中通商交渉がまさに政治の駆け引きの場となる。いずれにしても、米中通商交渉がすんなりとまとまるという期待は持てそうにない。市場は新たな不安材料を抱えることとなり、東京市場を含めて不安定な相場が当面続くことが予想される。