アメリカ合衆国では66%がソーシャルメディア上のbotによるニュースは悪い影響を及ぼすと考えている
フェイクニュース騒動で大きく揺れているが、ニュース分野の情報が配信側も受信側もソーシャルメディアによって大きな恩恵を受けているのは事実。では、どれほどまでがbot(Robotが由来。機械的に情報を生成し、定められた仕組みに従って情報を公開する自動プログラム。あるいは公開された情報そのもの)によるものだろうか。アメリカ合衆国の人達の認識を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年10月に発表した調査「Social Media Bots Draw Public's Attention and Concern」(※)の結果報告書を基に確認する。
ソーシャルメディア上にはbotによる情報が多数流れているが、総数はどれほどか、流れる情報全体における割合はどれほどかを確認する方法は無い。ソーシャルメディア上のbotを知っている人に限り(知らなければ判断のしようが無い)、ソーシャルメディア上に流れるニュースのうち、どれほどがbotによるものかと考えているか、その意見を聞いた結果が次のグラフ。全体では「大変な量」「そこそこの量」合わせて、それなりに大量のニュースがbotによって流されていると思っている人は8割を超える結果となった。
先の大統領選で多くのbotによっていわゆるフェイクニュースがソーシャルメディア上に流れ、それが選挙の投票動向を左右したと認識する人もいることから、botによるニュースの配信に興味を持つ人は多い。結果として強い関心をソーシャルメディア上に流れるニュースに対して抱くようになり、あれもこれもbotによるものに違いないと確信する、あるいはプロフィールなどから確認することになったのだろう。「大変な量」との認識は17%だが、「そこそこの量」まで合わせると81%になる。無論、これが正しい判断によるものかはまた別の話であるし、さらにbotによって配信されたニュースの内容が正しいものか否かもまた別の話。
属性別では大きな違いは無く、おおよそ1割強から2割が「大変な量」、6割前後が「そこそこの量」と判断している。30~49歳層でやや大きめの値が出ているのは、仕事などでニュースに触れる機会が多いからだろうか。また学歴別で低学歴の方が「大変な量」は高い値が出ているのに対し、「そこそこの量」は高学歴の方が高く、結果として「大変な量」「そこそこの量」の合計値は高学歴ほど高くなるのは興味深い傾向。
それでは出来事や問題に関わるニュースがbotで配信されることについて、どのような影響がアメリカ合衆国(に住んでいる人)に生じると考えているのだろうか。単にニュースとしての表現ではなく、出来事や問題に関わるとの前提が表記されていることから、報道機関によるニュースに限らず、イベントでの出来事や時節に関する主張なども合わせたものというニュアンスが含まれていると解釈した方がよいだろう。
先の大統領選におけるフェイクニュースに関する報道の影響からなのか、「よい影響」とする回答は1割前後に留まっており、「悪い影響」は6割前後を占める結果となっている。どのような内容を流そうとbotによるニュースなど世の中には大きな影響は与えないとする意見は2割前後。おおよそでは悪い影響が生じるとの認識と解釈してよさそうだ。
属性別では大きな差異は無し。強いて言えば男性、高学歴の方が「悪い影響」との認識を持つ人が多い。また興味深いことに、民主党支持者の方が「よい影響」との回答率は高い。ただし「悪い影響」の回答率もまた、民主党支持者の方が高いのだが。
あくまでもこれは個々の認識の限りで、実際にbotによってソーシャルメディア上に流されたニュースが悪い影響を及ぼすのか、よい影響をもたらすのかは確認することができない。一つ一つの事例を見ればよし悪しの判断はできたとしても、ソーシャルメディアに流れているbotによるニュースすべてを確認することはできず、さらには何を基準に、よいのか悪いのかとの判断も難しいからだ。
とはいえ、アメリカ合衆国においてソーシャルメディア上のbotを知っている人に限れば、botによるニュースはよくない存在であるとの認識が多数派であることもまた、否定できないことに違いは無い。
■関連記事:
※Social Media Bots Draw Public's Attention and Concern
Pew Research Centerの調査パネルATP(American Trends Panel)によって行われたもので、調査実施期間は2018年7月30日から8月12日。有効回答数は4581人。ATPはRDDで抽出された固定電話と携帯電話番号への通話で18歳以上のアメリカ合衆国居住者に対して応募が行われたもので、国勢調査の結果でウェイトバックが実施されている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。