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高さより速さ! 名古屋・梶山HCに“最後のピース”と言わしめた192センチ新外国籍選手の潜在能力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
名古屋ダイヤモンドドルフィンズに新加入したマーキース・カミングス選手(筆者撮影)

 今シーズンから名古屋ダイヤモンドドルフィンズに加入した新外国籍選手のマーキース・カミングス選手が、早くもその存在感を見せつけている。週末に実施された第4節では敵地で大阪エヴェッサと対戦し、第1戦は20得点、4リバウンド、2アシスト、2スティール、第2戦でも25得点、6リバウンド、4アシスト、1ブロックショット──とそれぞれチーム最多得点を記録し、チームの連勝に貢献している。

 カミングス選手は米国出身の30歳。NBAからドラフト指名されることはなかったが、大学卒業後はプロの道へ進み、フィリピンを皮切りに、NBA下部リーグのDリーグ(現在のGリーグ)、ポーランド、エジプト、レバノンを渡り歩き、昨シーズンも韓国とギリシャの各リーグに在籍していた歴戦の勇者だ。

 カミングス選手はBリーグではかなり異色の存在といえるだろう。外国籍選手といえば200センチを超えるビッグマンが多い中で、身長は日本人選手と遜色ない192センチしかない。栃木ブレックスのジェフ・ギブス選手のように190センチに満たない選手も存在しているが、彼は他の外国籍選手同様にインサイドが強い選手だ。しかしカミングス選手は、インサイドよりもアウトサイドから仕掛けるウィングマン・タイプ。チームの登録は「PF(パワーフォワード)」になっているが、本人は「SF(スモールフォワード)」だと断言している。

 ドルフィンズの梶山信吾HCはそうしたカミングス選手のプレースタイルを理解した上で、どうしても欲しい戦力としてチームに迎え入れているのだ。

 「今シーズンは昨シーズンよりアップテンポなバスケットをしたいと思っていたので、彼は一目惚れした選手ですし、(チームにとって)最後のワンピースとして本当に素晴らしい選手が獲れたと満足しています」

 ドルフィンズにはジャスティン・バーレル選手(204センチ)、クレイグ・ブラッキンズ選手(208センチ)の2人の外国籍ビッグマンも在籍している。今シーズンからのルール変更で外国籍選手は2人までしかベンチ登録できないため、相手チームとのマッチアップを考えながら3選手を起用していく方針だが、カミングス選手がドルフィンズにアップテンポとスピードという新たな武器をもたらしている。

 エヴェッサ戦2試合を見ても明らかだったが、相手チームにとってカミングス選手にマッチアップさせる選手の選択が非常に難しくなってくる。同じ外国籍選手をマークにつけると、アウトサイドからの仕掛けに対応できず、逆に同じポジションの日本人選手をつけるとなると、体重104キロのパワーに対抗するのは簡単なことではない。つまりどんな選手をつけても、ミスマッチが生じてしまうのだ。

 エヴェッサ戦では基本的に外国籍選手がマッチアップしていたのだが、第1戦ではドライブを仕掛けられ簡単にマークを外され16本中9本の2点シュートを決められ、第2戦ではドライブを警戒し2点シュートの機会を8本(うち4本成功)に抑えたものの、今度はアウトサイドから3点シュートを高確率(5本中4本成功)で沈められてしまい、最後まで彼の攻撃を防ぐことができなかった。

 実際にエヴェッサの穂坂健祐HCも、カミングス選手対策の難しさを認めている。

 「カミングス選手に関しては特殊すぎて、結構守りづらいです。もしかして日本人をつけていた方がよかったかもしれないですけど、それはたら・ればであり、結果論なので。ただそれで彼がポストアップしてきてダブルチームにいったら、彼はすごくパスが上手い選手なので、そこで名古屋さんはスポットのシューターがたくさんいて、それから(ボールを)回されてやられるのは嫌だと思って、こういうかたち(外国籍選手をマッチアップ)になりました。すごく特殊ですね。本当に強いです」

 第2戦の第4クォーターにエヴェッサが徐々に点差を詰め、絶好の反撃機を掴んだ場面があった。だがチームで一番身長の高いジョシュ・ハレルソン選手をカミングス選手にマッチアップさせたことで、バーレル選手についたファイ・パブ月瑠選手との身長・体格差をつかれ、結局インサイドから崩されてしまい再び点差を広げられてしまった。カミングス選手が直接得点に絡んだわけではないが、これもカミングス選手が生み出したミスマッチの賜物といえるだろう。

 「自分のプレースタイルが、どんどん走って突破していくというチームのスタイルにも似ていてすごく合っていると思う。なのでチームに合流してすぐにチームに適応できたし、毎試合自分らしいプレーができていると感じている。

 もちろん開幕から6試合しか戦っていないし、まだお互いに理解を深めている最中だ。まだ多くのことで合わないこともあるし、それは皆が理解している。だがもっと試合を重ねていけば、もっと1つになってプレーできるようになるだろう。

 自分はよりSFだと思うし、ガードもプレーできる。今年でプロ生活6年目だけど、ずっと同じ役割を担ってきた。このポジションでプレーできることは、いろいろな場面でマッチアップをクリエートできるし、ディフェンスでも他のガード選手ともスイッチできる。自分にとっても、チームにとってもすごく有益だと思う」

 カミングス選手が加入したことで、外国籍選手のバリエーションを増えたドルフィンズ。今シーズンから西地区に移り、エヴェッサをはじめ同地区チームの脅威になるのは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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