トップは「週刊ヤングジャンプ」…男性向けコミック誌の部数動向をさぐる(2019年1~3月)
「週刊ヤングジャンプ」が46.7万部でトップ
専用の電子書籍・雑誌リーダーだけで無くパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇しているとの見方もある。一方で紙媒体を用いた本はその立ち位置を落とし、ビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。今回はその雑誌のうち、特にすき間時間のよき相棒である男性向けコミック誌(少年向けコミック誌よりも対象年齢が上の雑誌。青年向けも含む)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、その実情をさぐる。
まずは男性向けコミック誌の直近四半期、2019年1~3月の実情。
男性向けコミック誌は少年向けと比べると印刷証明付き部数の規模が小さく、また飛びぬけた値を示すコミック誌が無いため、上位陣では僅差で順位を競り合う雑誌が複数見られる。ちょっとしたヒット作の登場があれば、順位が塗り替えられるような状況。
トップを行くのは「週刊ヤングジャンプ」の46.7万部。ついで「ビッグコミックオリジナル」の46.6万部、ヤングマガジンの32.6万部。「週刊ヤングジャンプ」と「ビッグコミックオリジナル」の部数差はわずかで、今後順位が入れ替わる可能性は十分にある。
ほぼマイナス…前四半期比
続いて公開データを基に各誌の前・今期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。雑誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、雑誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。
プラスを示した雑誌は皆無。誤差(上下幅5%以内)を超えた下げ幅を示したのも皆無で、「月刊!スピリッツ」以外はすべて誤差範囲内の下げ。元々部数が4ケタ台の「月刊!スピリッツ」は往々にして前期からの部数を継続する形となるが、それ以外の雑誌は5ケタから6ケタの部数を持ち、それらが一様に下げ。誤差範囲内とはいえ、トレンド的に男性向けコミック誌全体として部数が減る傾向にあるとの解釈が無難ではある。
季節変動を除外できる前年同期比では
続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2019年1~3月分に関する検証なので、その1年前にあたる2018年1~3月分の部数との比較となる。少々間が開いた期間の比較となるが、季節変動を除外し、より厳密にすう勢を知ることができる。数十年もの歴史を誇る雑誌もある中で、わずか1年で何割もの下げ幅を示す雑誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる。
全誌マイナス領域で、誤差領域を超えた下げ幅を示したのは14誌、中でも「モーニング2」の下げ幅が群を抜いており、強い危機感が改めて認識できる。他にも「アフタヌーン」「イブニング」「モーニング」「ヤングマガジン」「ヤングアニマル」「週刊ヤングジャンプ」と名だたるコミック誌たちが1割を超える下げ幅を示している。
有名どころ、コンビニなどでも多々目に留まるコミック誌が軒並み名を連ねているのを見るに、もの悲しさを覚えるものがある。同時に「そういえば最近になって立ち寄り先のコンビニで見かけなくなったな」と思い返したコミック誌も複数あるだけに、複雑な心境にも追いやられる。ただし男性向けコミック誌も多くが電子化されており、電子版に読者がシフトした結果である可能性は否定できない。
現在は電子書籍、ウェブ漫画が浸透する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。
なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用者も確実に増えている。特に今記事の該当ジャンルである男子コミック誌は電子雑誌化率が高く、そのため印刷証明付き部数が減少を続けても、各雑誌、コミックそのものの需要がそれと連動する形で減少しているとは限らないことは認識しておく必要がある。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。