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中国のブロック攻略法 男子バレー 2連勝なるか

柄谷雅紀スポーツ記者
白星発進した日本。2連勝して五輪に前進したい。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

平均身長2メートル超えの中国

リオデジャネイロ五輪世界最終予選兼アジア予選で、白星発進したバレーボール男子日本代表。29日には中国と対戦する。アジア枠での五輪出場権も見据えて、絶対に勝っておきたい相手だ。世界ランキングこそ中国の19位に対し日本が14位と上に位置するが、全く油断できない相手である。むしろ、強い。1-3で敗れたフランス戦を見ると、そんな印象が強く残った。

昨年のワールドカップにも出場しておらず、国際経験はあまりない。しかし、ずらりと並ぶ大型選手は、昨年のワールドリーグを制した強豪のフランスに全く引けを取らなかった。リベロを除く先発の平均身長はなんと201.3センチ。日本の先発の平均身長190センチより10センチ以上も高い。セッター焦帥が194センチで、それ以外の選手は全員が200センチ以上。世界トップクラスの高さと言っても過言ではない。

驚かされたのがブロック力の高さだ。ブロック得点はフランスの8点を大きく上回る14点。特に、サイドアタッカーのブロック力が際立っていた。1枚ブロックでもフランスの強力なアタッカー陣をシャットアウトする場面が多々あった。フランスのセッター、トニウッティも「中国のブロックが非常に良かった」と言っていた。

いかに高いブロックをかいくぐるか

しかし、その高いブロックにも穴はある。中国の謝国臣監督は「どの選手がどこをマークするかだいたいは決まっているが、決まり事と言うようなものはない」と明かした。個々のブロック能力は高いが、あまり組織化されていないのである。

中国のブロック陣は、中央付近に集まってトスを見て動く「バンチリード」ではなく、両サイドのブロッカーがサイドよりに立ってトスを見て動く「スプレッドリード」に近い形を取っている。スプレッドリードブロックは両サイドへの攻撃に高い対応力がある反面、中央からの攻撃にはあまり強くない。なぜなら、バンチリードの場合はクイックやパイプ(中央からのバックアタック)に対して、センターブロッカーだけでなく両サイドのブロッカーも手を出してヘルプに行けるが、スプレッドリードの場合はそれが間に合わないからだ。

実際、フランスの中央からの攻撃は非常に有効だった。クイック対して、中国のブロックはほとんど1枚。それもコミットブロック(トスが上がる前に動きを予測して跳ぶブロック)ではないので、よく決まっていた。Bクイックに対してはサイドブロッカーがヘルプに来ることがたまにあったが、それもほとんど意味がないレベル。ヘルプに行くという意識も希薄で、パイプに至ってはほとんどノーマークだった。クイックにつられて中国のブロックが跳ぶことが多かったからだ。パイプのスピードであればサイドに寄っているブロッカーは間に合わない。サイドブロッカーがパイプにブロックを跳ぶという場面も見られず、結果的にほとんどブロックがない状態になっていた。ヘルプに行く、チームでブロック戦術をとるというわけではなく、個々の能力でブロックしていると言っていいだろう。

日本もここを攻めればいい。中央からのクイックを積極的に使い、ときおり石川祐希や柳田将洋のパイプを織り交ぜる。セッター深津英臣が「強く意識を持って使った」と言うように、ベネズエラ戦でも出耒田敬、富松崇彰のクイックはよく決まっており、石川のパイプも悪くなかった。中国の高いブロックには、こうした中央からの攻撃が間違いなく有効だ。

そしてもう一つ、中国のブロッカー陣には特徴があった。11番のミドルブロッカー耿金に顕著だったが、相手のミドルブロッカーがA、Bクイックに入れる位置にいる場合、コート中央から1~2歩分、Bクイックよりのところに立っていた。この状態で相手のライト側にトスが上がると、ミドルブロッカーは6メートル近くを移動しないといけなくなる。そのためブロックがライト側からのスパイクに間に合わず、フランスのライト側の攻撃に対して1枚ブロックになることが多々あった。また、12番のミドルブロッカー饒書涵は相手のライト側へ移動するステップがあまりうまくなかった。この弱点を突くため、Cクイックよりも、A、Bクイックを見せながらライト側の清水邦広に攻撃させるのも選択肢だろう。

ミドルブロッカーの攻撃にも要注意

日本のミドルブロッカー陣が注意しなければいけないのは、中国のミドルブロッカー陣の攻撃だ。通常のAクイックやBクイックではなく、少し工夫を加えてくることが多い。最も多かったのは、Bクイックの位置から斜めに跳んでAクイックの位置でスパイクを打つ攻撃だ。これには身長206センチと209センチのフランスのミドルブロッカー陣も惑わされ、高い決定率を誇っていた。中国のミドルブロッカー陣は高さもスパイク力もある。南部監督が「強化してきた」というバンチリードブロックで、しつこく人数をかけてブロックに跳んで自由に攻撃させないようにしたい。

中国は4年前のこの大会で敗れた相手。リベンジを果たし、五輪切符の最低条件とみられる4勝に前進したいところだ。あの悔しさを繰り返さないために、そしてリオに行くために。何としても道を切り拓いてもらいたい。

スポーツ記者

1985年生まれ、大阪府箕面市出身。中学から始めたバレーボールにのめり込み、大学までバレー一筋。筑波大バレー部でプレーした。2008年に大手新聞社に入社し、新潟、横浜、東京社会部で事件、事故、裁判を担当。新潟時代の2009年、高校野球担当として夏の甲子園で準優勝した日本文理を密着取材した。2013年に大手通信社へ。プロ野球やJリーグの取材を経て、2018年平昌五輪、2019年ジャカルタ・アジア大会、2021年東京五輪、2022年北京五輪を現地で取材。バレーボールの取材は2015年W杯から本格的に開始。冬はスキーを取材する。スポーツのおもしろさをわかりやすく伝えたいと奮闘中。

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