【火の鳥、世界一に挑戦】成長を感じた女子バレー、悔しさや思いをつなぎ最終予選でリオ切符を
早くも日本のエースになるまでに成長した古賀
「きつかった」。最終戦が終わったとき、古賀(紗理那)はまず、そう言いました。
「どんなに決まっていても勝たなくてはいけないんですね。勝たなければ疲れるし、疲労がたまって苦しいし、精神的にもつらくなる。やっぱり世界はすごかった」と。
何がすごかったのか聞くと、中国はブロックが高かったと。逆にロシアのブロックは高かったが、よく見えたという。そういう収穫も含め、「今大会、信頼できる先輩方に囲まれていろんなことを経験できてよかった。勉強になったけど、すべての面でレベルアップしないといけない、苦しいときに冷静にプレーできるメンタルも大事と反省。オリンピックでメダルを取るためにはOQT(世界最終予選兼アジア大陸予選)で勝たなくてはならないから、苦しいときに決められるエースになりたいです」と。
大会が始まる前は「緊張するけど与えられたことを一生懸命やります」とそんな感じだった古賀が、大会後にはそう話すくらいに、19歳にして、ワールドカップという大会を通してヒロインにもなり、次世代エースいや早くも日本のエースになるまでに成長したのは素晴らしい。数字もそれを証明している(Best Scorers5位、Best Spikers14位、Best Servers3位、Best Receivers2位)。日本にとってのすごい宝、収穫だ。
木村が必要なんだぞという思いに応えてほしい
木村(沙織)は中国戦ですべてが終わった後、泣いていた。みんなで作り上げてきて、その中で沙織はキャプテンとして悩み、苦労してきたので、終わった寂しさと出来なかった、負けた悔しさなどがあふれたのだろうと思う。スタッフも含め、みんな涙を流していた。私もコートサイドで思わずもらい泣きしてしまったくらいだ。みんなで泣けるチームになった、いいチームになったと思う。
五輪切符の可能性が残る大事なアメリカ戦。レセプションが乱れ、木村のスパイクの決定率・効果率も悪くなり、眞鍋監督は木村を交代させた。木村の認識では「パス(サーブレシーブ)が悪かったから代えられたのかな」と取材に答えていた。眞鍋監督は、「まず木村のスパイク決定率・効果率が悪かった。そしてレセプションも」と言われた。
沙織の中で意味の理解や葛藤があったのか? 中国戦の日の朝の練習を見ていても、いつもの沙織ではなかった。そういうのが試合に出ないかと心配していたが、やはり出てしまい、沙織の攻撃が決まらない。それでコースを確認したり、おかしいなといらっとするような表情を見せたり……。
そんなとき、私のいるコートサイドからは選手の表情が見え、声も聞こえることがあるのだが、座安(琴希)が打ち方についても声をかけたり、周りや古藤(千鶴)らコート外の選手も「大丈夫」と沙織にすごく声をかけていた。早く1本決まるようにと。
木村のつなぎの力やブロックの高さを考えたとしてもスパイクの決定率・効果率を思えば、前衛の攻撃だけを考えれば、眞鍋監督は石井(優希)に代えていたと思う。しかし、監督が代えなかったのは木村のレセプション。それほど乱れていなかった。守りとつなぎのチームの象徴、木村が必要なんだぞと。だからこそ、最後まで代えなかったのだと。
これからOQTを戦う。もう一回、オリンピックで勝つために出場権をかけて挑む。木村でチームを作らなければならない、お前が必要だという監督のメッセージだと思った。そういう監督の思いや愛情に、沙織はもう一度応えてくれると思うし、そう信じている。
長岡には「世界一」になるための要求として
同じ左利きということでずっと注目し、期待している長岡(望悠)。今大会、非常に成長したところを見せてくれた。一つは「波がなくなった」こと。そして喜怒哀楽を出すようなキャラクターから、決まったら次に点を取るためにどうしたらいいか、自分を冷静に分析できる落ち着いたプレーヤーになってきた。サーブを打つときも無になっていたと。「試合中、自分でゾーンに入ったり出たりできたらいいと思いませんか」とそんな話を一緒にしたりしていたが、勢いやノリでプレーしていた若手時代から、チームの柱、リーダーとしての場所まできたようだ。男子の清水(邦広)的な感じで、また一つ段階を上れるといいと思う。
ただ、中国戦で迫田(さおり)に途中交代させられたというのはまだ課題があるということ。眞鍋監督も「日本では長岡は普通に打っても決まる。打点は高いし、好きなように打っていい」という。しかし、セルビアやアメリカのような高いブロックでは「世界と比べたら大きくないのだから同じ打ち方をしてはダメだ」と。
強弱をつけた攻撃や、ブロックアウトやコース打ちを常に出来る、エースであり、ナンバー1。もちろんこれは「世界一」になるための、そのための長岡への要求なのだろう。金メダルを取るような、どんな素晴らしい選手でも同じように持っている課題だから、自分を分析して、練習に取り組んで、次の戦いOQTでまた成長した姿を見せてくれるのを期待している。
苦しんだ迫田は最後笑顔に、新たな戦いの始まり
最後の最後まで苦しんだ迫田。こんなに調子が出ない大会は初めてと本人も話していた。「その分、みんなが“決めさせてあげよう”とトスをくれたり、声をかけてくれたりして、みんなに気を遣わせたり迷惑をかけた分、最後(の中国戦)は自分が仕事できたらいいと思って。どんなときも明るく笑顔だけは忘れないでプレーしよう」と、そう話していたリオ(迫田)が、途中交代で入り、プレーでき最後にコートにいて、笑顔が見られた。
「悔いのないようにやりました。まず1本目を決められて……得点もできた。みんなと最後にバレーができてコートにいれたことに感謝したい」と中国戦後、話していた。チームってバレーっていいなと感じられた大会だったという。
「技術的な課題は山ほどあって、もっともっと磨かなければ世界に通用しないと思った」とも。リオ五輪に向け、リオの新たな戦いが始まる。
「オリンピックで勝つ」ための土台はできた
結果は5位だったが、木村、迫田、山口(舞)、座安以外、ワールドカップ初出場という。ミドルブロッカーの島村(春世)、大竹(里歩)、リベロの佐藤(澪)ら若い選手、古藤ら代表経験の少ない選手がオリンピックの出場権がかかるような大きな大会を経験できたことは収穫であり、OQTにつながると思う。今回金メダルの中国をはじめ、2位のセルビア、世界ランク1位のアメリカそしてロシアといった強豪を相手に競った試合ができたというのはチームの力がついてきた証。一つずつの積み重ね、やろうとしてきたことが着実に形になっていると感じた。来季、新たなメンバーになる可能性もあるが、「オリンピックで勝つ」ための土台はできたと思う。
男子も開幕、初戦はエジプトに勝利
男子大会も始まった。最後まで懸命に戦った女子から素晴らしいバトンをつながれた男子は、初戦でランク上のエジプトをフルセットの末に破り開幕戦を勝利で飾りました。進化している南部ジャパン。男子も熱い戦いが続きます。ぜひ応援してあげてください。