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【世界バレー】ベストな形で選手を使い分ける「全員バレー」 ひとつになった中田ジャパン、戦いきって

大林素子スポーツキャスター、女優
(写真:松尾/アフロスポーツ)

サーブを立て直せたのはよかった

 プエルトリコに無事ストレートで勝てたということは、この先を考えるとチームとしてよかった。

 久美さん(中田監督)も言っていたように、前日のドミニカ共和国戦はストレートで勝ってもおかしくない状況からフルセットまでもつれてしまった。序盤にサーブミスしたことによってサーブが消極的になったり狙いが緩くなったり、狙ったところに対して少しでも甘いと相手のリベロ(カスティージョ)がとにかく取りに来るということがあった。

 そういうことに対して試合でいかに対応していくかがこれからすごく大事になるので、そういう意味では、プエルトリコ戦はもちろん戦う相手として弱いというわけではないが、修正するための1戦、きっちり勝つべき相手だったので、サーブに関して立て直せたのはよかったと思います。

チャレンジしての前向きなコンビミス

 攻撃のコンビに関しては、大会が始まってからセッター(田代佳奈美)もアタッカーもお互い、なかなか合わず苦しむこともありましたが、試合を重ねるにつれ、少しずつ形ができてきました。

 「リスクを覚悟でコンビを使う」「バックアタックを積極的に使う」といったチャレンジでのミスも前向きになってきている。私もコートサイドで見ながらベンチレポートで「コンビが合ってなくて心配です」とコメントしながらも、やろうとしていることは見えているので、コンビミスには悲観的にはなりすぎないでほしい。とはいえ、矛盾しますがここから先の戦いには今までのミスが許されなくなります。

ミドルやバックアタックを使おうとチャレンジしているセッターの田代
ミドルやバックアタックを使おうとチャレンジしているセッターの田代

 選手も言っていますが、チームがやろうとしたことをやれないで負けてしまうのではなく、自分たちで何かをやろうとしてできなかった、ミスをした、であれば、オランダ戦で負けたときもそうでしたが、次に向かえる。そこに久美さんが最後まで使い続けている思いがある。

「いいチームになってきた」と石井も

 いろいろあるけれど、石井(優希)も言っていたように、「いいチームになってきた」。ここにきてチームのまとまりがぎゅっと固まってきたので、いい状況でセルビア戦に向かえる。

これが世界バレー、疲労も乗り越えて

 もちろん疲労はあります。セルビア戦に向け、練習も軽めにして体調を整えました。「世界バレーって長いですよね」と長岡(望悠)も言っていました。試合をやってもやっても順位が見えてこない。それはオリンピックよりも多くのチームが戦っているからで、だからこそ「真の世界一を決める」大会。

 日本には初めて世界バレーに出場する選手も多いので、これが世界バレーなんだ、と選手は身を持ってそのすごさを感じていると思います。それに立ち向かいながら、自分のコンディションとメンタルをいかに最後までキープできるかどうか、それができたチームが優勝する。そこはもう経験して乗り越えなくてはならないことなので。

フルセットになったドミニカ戦。経験、キャリアのある石井らが苦しい状況で出場し、活躍
フルセットになったドミニカ戦。経験、キャリアのある石井らが苦しい状況で出場し、活躍

ベストな形で選手起用、日本はいい状況

 幸い、日本の場合は、アタッカー陣含めて、いい状況でメンバーを使い分けしています。悪いから交代するというのはほとんどない、マイナスのメンバーチェンジではないので、いい状態で、その日の大切なポイントや課題に合わせたメンバーというように相手に対してのベストな形で選手を起用しているので、ここにきて疲労ということが出てきましたが、他のチームよりはいい状況、いい環境だと思うので、これを大事にしてほしい。疲れているのは日本だけではないし、どのチームも同じこと。

「全員バレー」パズルもいい具合

 黒後(愛)、古賀(紗理那)、新鍋(理沙)らに疲労が見えたら、石井や長岡といった経験、キャリアのある人がドミニカ戦など苦しいところで活躍。荒木(絵里香)も2戦休むことができた。

 これが「全員バレー」。その試合試合でベストを使っていくという形が中田ジャパン。そのパズル具合が非常にいい具合できている。

集中力を途切らせず、1戦ずつ立ち向かえ

 ブラジルがドイツに負けたので第2次ラウンドは大波乱。日本としては素晴らしい追い風でもあるが、最終日まで日本は集中力を途切らせることなく戦いきってほしい。

 第1次ラウンドというのはやっぱり予選、どのグループにも、力の差があるチームがいた。第2次ラウンドになって、本当に強いチームが集まってきた。

 ベスト16。ここからが厳しいのは当たり前なので、1戦ずつ立ち向かうしかない。

全てを出し切り戦ってほしい

 久美さんが言う「メダル」へ向けて選手もチームもひとつになった。結果がすべてだという「覚悟」を引き続き持って頑張るしかない。

 私はコートサイドからそれを祈り伝えるのみです。全てを出し切り戦ってほしいと願います!

プエルトリコ戦で活躍した荒木。「メダル」へ向けていいチームになってきた。ひとつになって応援しましょう
プエルトリコ戦で活躍した荒木。「メダル」へ向けていいチームになってきた。ひとつになって応援しましょう

■大会システム

※第2次ラウンドは各組8チーム中、上位3チームが第3次ラウンドに進出

※日本のいるE組は「セルビア、オランダ、日本、ブラジル、ドイツ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、メキシコ」の8チーム(第1次ラウンドの順位より)

(写真・撮影:ホリプロ)

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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