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G20では中国経済や米利上げが焦点に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

9月4~5日にトルコの首都アンカラで開かれる20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、中国経済の現状や先行きが主要議題となるようである。今回の株式市場を中心とした市場の混乱は中国経済の先行き不透明感が大きな要因となっていた。中国人民銀行の利下げに続いての元切り下げなどをきっかけに、中国経済の減速の深刻さが浮き彫りになった。

今回のG20では米国の利上げの行方も焦点となろう。今回の相場変動のきっかけが中国にあったとしても、その根本的な要因としては日米欧の中央銀行が行った大胆な金融政策からの脱却の動きがある。何故、非伝統的とされる金融緩和策を実施したのかといえば、それはサブプライムローン問題からリーマンショック、ギリシャ・ショックからの欧州の信用不安という世界的な金融経済危機が立て続けに起きたためである。その危機は去った。それであれば異常な金融政策から正常時の金融政策に戻すことが当然ながら、金融市場はあまりに金融政策に依存する状況となってしまった。

真っ先に正常化に向けて舵をとったFRBの動きをみて、金融市場が動意をみせた。中国経済の減速や、それもきっかけとした原油価格の下落も手伝って新興国経済への影響などが複合要因となって、世界的な株価の調整が起きた。これだけの動きをした背景にはヘッジファンドなどの仕掛け的な動きも入っていたと予想され、HFTと呼ばれるコンピュータを使ったシステムトレードが値動きをさらに荒くさせたものとみられる。

非常時からの脱却において市場の動揺をいかに抑えるのかは大きな課題ではあるが、すでにFRBのテーパリングを成功させている。今回の市場の動揺は別の要因も絡んだことでやや過激な動きとはなったが、これがFRBの利上げそのものを阻止するものとはならないと思われる。この程度の相場変動も想定内ではなかったか。

それよりも気になるのは、中央銀行による過度な金融緩和だけでなく、政府絡みで株価を上昇、もしくは維持させようとしている国が先進国にあることである。百年に一度の大きな危機は去っていたにも関わらず、デフレ脱却との名目でリフレ政策を実行したのは良いが、大胆な国債買入が物価上昇に結びつかないことがむしろ証明された格好となっている。さらに今回は海外初の株安にも関わらず、すでに株高ありきの政策をとってしまっていることで、無理矢理株安を食い止めようとの動きもあったようにみえる。

1989年末までのバブル経済の崩壊理由をもう一度振り返る必要がある。あのときも円高対策としての金融緩和とともに、土地や株の価格が右肩上がりとなることを前提とした運用を銀行などが行っていたことが、のちのバブル崩壊による金融経済ショックの要因となる。これがデフレそのものの要因となった。

今回は銀行というよりも、GPIFなどクジラと称されるところが、株式市場の右肩上がりを前提とした運用に変更している。いずれこれはゆうちょなども同様となると予想されている。もし株式市場が今後、大きな調整を迎えると運用益どころではなくなる懸念が生じる可能性があるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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