あなたの会社はどっち? 「集権型人事」と「分権型人事」のメリット・デメリット
■「集権型」と「分権型」
様々な会社の人事コンサルティングをしていると、人事や採用を「集権型」で行っている会社と、「分権型」で行っている会社とに大別されることに気づきます。
「集権型」とは、人事の機能を人事部などの専門組織に集中させて、中央集権的に行う方式です。「分権型」とはその逆で、人事機能を担うのは各現場で、人事部はあくまで現場のサポートに徹するという方式です。
全社を集権型や分権型だけで統一している会社もありますが、2つを使い分ける会社もあります。例えば採用において、新卒採用は募集から面接、内定出し、配属までを人事部が中心に「集権型」で行い、中途採用は各事業現場が「分権型」で行うケースもよくあります。
■集権型の特徴:「効率性」「専門性」「全体最適」
さて、この集権/分権ですが、どういう場合にどちらの方式で行うのがよいか、一緒に考えてみたいと思います。まず、集権型ですが、最大のメリットは専門組織に人事機能を集中させることによる「効率性」と「専門性」の高さです。
例えば、採用を集権で行うと、採用広告の出稿や人材エージェントとのコミュニケーション、選考などを一括して行うことで、ダブりなどの無駄がなく効率性が高まります。
また、何度も繰り返し集中的に広告出稿や面接選考などを行うため、それについてのスキルやノウハウが担当者たちに蓄積されていき、専門性が高まります。
また、集権型は「全体最適」を実現しやすくなります。各事業でバラバラに採用していると、本当は他の事業や仕事の方が適している人でも自部門に採用したり、自部門には適しないと落としたりしてしまいます。
集権型は、最適な部門への配属を前提に採用をすることができるので、そのような問題が起こりません。また、全体最適の一種ですが、何らかの理由で組織の方向合わせを行わなくてはならないとき、全体の方向性を右向け右で一斉に統一させるためには集権型が適しており、統率力が高いことも特徴と言えます。
■分権型の特徴:「迅速性」「実効性」「発見力」
次に、分権型ですが、最大のメリットは直接的に日々事業を行っている現場が人事機能を担うことによる「迅速性」と「実効性」です。
集権型の場合、どうしても現場と人事の間にコミュニケーションコストが発生し、対応のスピードが落ちたり、伝言ゲームのミスにより誤った情報が伝わったりするなどの問題が生じます。
分権型の場合は、現場が自分たちで欲しい人を直接採用したり育成したりするわけですのでそれらの問題がなく、迅速に自分たちのやりたいことができます。また、試行錯誤のスピードが高まることで、実効性も高まっていく可能性があります。
さらに、分権型は、様々な人事判断が個々の現場に任されるために、当然ながらその現場に最も良い判断を行うことになります。長期的にはともかく、短期的には個々の部署が最適な人事を行うことで、組織の業績が最大化することもあります。
また、個別具体的なマーケットや顧客に日々接している現場が考えることで、世の中の新しい動きの兆しを発見することができます。どんな能力が求められるようになってきているのか、どんな人が実際に活躍しているのかを最初に知るのは常に現場です。
■組織は「集権」と「分権」の間で揺れる
以上のように、人事を「集権型」で行うことと「分権型」で行うことのメリットを見てきました。デメリットはそれぞれの裏返しです。まとめると以下のようになります。
【集権型と分権型のメリット】
全体最適(長期的視野/未来) ⇔ 部分最適(短期的視野/現在)
統率力(方針は明確)⇔ 発見力(方針は曖昧)
効率性(コストが小さい)⇔ 実効性(ベネフィットが大きい)
専門性(ノウハウがたまる)⇔ 迅速性(ノウハウなしでとにかくやる)
結論としては、「集権」と「分権」はどちらが優れているという話ではなく、その時の組織の抱えている問題に応じて、必要な方式を取り入れていけばよいと思います。
多くの会社は、成長の過程において安定的な「成長期」と不安定な「変革期」を繰り返しますが、大まかに見れば成長期の組織課題には「集権型」のメリットが、変革期には「分権型」のメリットが合致しているように思われます。
つまり、「わが社は集権的な人事を行っています(あるいはその逆)」と断じるのではなく、会社の成長ステージの変化に応じて、人事や採用も「集権」と「分権」と時々に応じて変化させていく柔軟性が大切なのではないでしょうか。
※キャリコネニュースにて人と組織に関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。