トランプ大統領のFRBへの口先介入
米国のトランプ米大統領は29日、米連邦準備理事会(FRB)に「小幅の利下げでは不十分だ」とツイッターで述べ、大幅な金融緩和を要求した。0.25%の利下げでは不十分であり、少なくとも0.50%以上の利下げを要求してきた格好となった。
トランプ大統領は、利上げによって「潜在的に失われた富は大きい」とも不満を表したそうだが、いったいどのような富が潜在的に失われてきたといえるのであろうか。
むしろ、非常時の緩和策によって本来もらえるべき利子がもらえないといった状況ともなっているのではなかろうか。これについては預貯金が多い日本国民と債務の大きい米国国民では認識が異なり、トランプ大統領に賛同する声もあるかもしれない。ただ、少なくともFRBの正常化にともなう利上げが景気そのものを急速に後退させたようには思えない。
日本の状況をみても、いわゆるリバーサルレート理論によるような負の影響も大きくなってきている。金利を下げ過ぎると金融機関の仲介機能を損ない、その結果として金融機関の収益が悪化するだけでなく、手数料稼ぎのための無理な営業などが問題視されている。これは国民生活に悪影響を与えるだけでなく、日本経済にも負の影響を与えている可能性がある。
中央銀行が積極的に金融緩和をすれば、それですべてがうまく行く。国債が自国通貨で賄えるならばいくら借金しても問題ないので積極的な財政政策を進めよとの意見がマスコミでも良くとり上げられる。もしそうであるならば、無税国家が実現することで、我々の生活は豊かになりそうだが、そんな理論が通用するはずはない。
これらの動きについてポピュリズムの一環との見方があり、確かにそのようにも思える。その代表的な存在がトランプ大統領ともいえるのかもしれない。FRB議長を大統領が罷免することは実質的にはできない。FRB議長は大統領にではなく議会を通じて国民に対する説明責任を担っている。このため、このような大統領の口先介入は本来無視しても良いが、さすがに行政のトップの意見を完全無視することもできないのが実情であろう。
利上げや量的緩和の停止、縮小は引き締め策に映りかねない。しかし、そもそも100年に一度といった世界的な金融経済危機に対処するための、非常時における非伝統的な金融緩和であったことを忘れてはならない。FRBはそこから真っ先に出口に出てきたが、ECBはブレーキだけで終わりそうで、日本は向きすら変えられていない。この状況そのものがおかしいと思うのであるが。