再び円安が進行しドル円は140円が視野に。円安により物価上昇がさらに加速する恐れ、生活防衛も必要に
26日にワイオミング州ジャクソンホールで開催されているカンザスシティ連銀主催のシンポジウムで、パウエルFRB議長は、インフレの抑制について「やり遂げるまでやり続けなければならない」と利上げ継続を明らかにした。
成長鈍化などの痛みを伴ったとしてもインフレが抑制されるまで、当面金融引き締めが必要という見解を示した。また、「歴史は時期尚早な金融緩和を強く戒めている」と来年にも利下げかとの市場の楽観論を強くけん制した。
これを受けて、来年の利下げも期待していた米国市場は動揺し、ダウ平均は26日に1008ドルもの下落となり、週明け29日にも184ドル安、30日は308ドル安と続落となった。米債は売られ、米10年債利回りは 26日は3.04%と小幅上昇となっていたが、29日は一時3.13%まで上昇し3.10%、30日には一時3.15%まで上昇した。
米長期金利の上昇もあり、ドル円はここにきて再び139円台を回復し、7月20日につけた139円39銭が視野に入ってきた。139円台での滞空時間はいまのところ少ないものの、ECBの大幅利上げ観測でユーロ円も139円台に上昇するなどしており、ドル円は直近高値を抜いて140円台を付ける可能性が出てきている。140円台のドル円となると、1998年以来のことになる。
欧州では天然ガスの価格が高騰し、エネルギー危機の様相を強めている。原油先物価格は乱高下しているが、WTI先物で100ドル近くと高止まりしている。少なくともエネルギー価格が急落することは現状考えにくい。
ここに異常気象の影響が出てくる可能性がある。欧州や中国、米国などでの干ばつによる影響。反対に大雨による影響などもあり、秋の穀物の収穫への影響が懸念される。その上、ロシアによるウクライナ侵攻で穀倉地帯のウクライナなどからの輸出が減少する恐れも出てきている。
今後、食料品などへの影響がさらに強まる恐れがあり、値上げが繰り返されることも想定されうる。ここに円安が加われることで、輸入される原材料価格やエネルギー価格の上昇分が、次第に商品価格に転嫁されることが予想される。ハイテク製品や白物家電など含め、あらゆるものが値上がりしてくることを想定しておく必要がある。
インフレファイターとして積極的な利上げを進める米国の中央銀行にあたるFRBに対し、日銀の黒田総裁は持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないと語ったように緩和姿勢をあらためる様子はない。この状態が継続される限り、ドル円の上昇基調は止めることが難しくなる。
物価上昇を前提として、我々も生活防衛が必要になる。必要となりそうなものはとりあえず早めに揃えておくなどの手段を講ずる必要もあろう。