第一志望の会社はなるべく早く受けるべきか?「採用基準は超えてるのに不合格」が出てしまうメカニズムとは
■いよいよ23卒新卒本番
先月3月1日、政府が定めた新卒採用広報解禁日となり、就職活動が本格的に始まりました。経団連など企業側は2021年春から自ら採用時期を規制していないため、大学3年生のインターンシップなどを通じた早期採用活動がポピュラーになっています。
しかし、影響力の強い大手就職ナビは従来通り3月グランドオープンのため、学生はここから就職活動を本格化させるわけです。そこからおおよそ1ヶ月たった今、就職活動を始めた学生は、急いで第一志望の会社を早く受けるべきか、それともまだじっくり準備して万全な状態で受けるべきか、について考えてみたいと思います。
■早く受けた方が有利になる可能性が高い
このことを考える上で知っておかねばならないのが、企業がどんなプロセスで採用活動を行なっているかです。
素朴に考えると、公平を期すために応募者全員の1次面接が終わってから2次面接、全員の2次面接が終わってから3次面接と、足並みを揃えて採用していくように思われるかもしれませんが、そうではありません。多くの会社は「早く来た人は早く採用プロセスに乗せていく」五月雨式に採用活動をしています。
1次面接がすべて終わるまで学生を長く待たせておいても辞退されないのは、人気企業に限られます。ふつうの企業は、早く来た学生を待たせることはせずに、早くステップを踏んでもらう。これが一般的な採用活動です。
そうなると、早く受験した学生は早く、後で受験した人は後で、最終面接にたどりつくことになります。さて、この場合、どちらが有利なのでしょうか。
私は「基本的には早く受験した方が有利」だと思います。なぜならば、最終面接にたどりついた時点で、まだ空いている席が多い方が入りやすいからです。
企業の採用基準が、数週間から数ヶ月で変わることはないでしょう。ただ、時間が経過して枠が少なくなると、徐々に企業の選考は厳しくなっていきますので、これを「基準が変わる」というのであれば、そう言えるかもしれません。
■席が埋まってくると後のために残しておきたくなる
なぜそのようなことが起こるのでしょうか。それは、合否を分ける採用基準の前後の人が多いことが理由です。よく大学受験で「合否のボーダーラインの1点の中に100人以上いる」という話を聞きますが、まさにあれです。
簡略化して説明をすると、例えば企業の採用基準を100点満点中50点としましょう。そうすると、初期でも後期でも50点付近には多くの学生がいます。席がまだまだいくらでも空いている初期の選考では、基準の50点を超えてさえいればどんどん合格が出ます。
ところが徐々に席が埋まってくると、企業側は残りの席数を考えて合否をつけるようになります。なぜなら、50点の人ばかりに合格を出してしまうと、後から来るかもしれない80点や90点の人の席がなくなってしまうかもしれないからです。
高得点者が来た際に「席がないから」という理由で企業は落としたくはありません。それで、これから受ける人の人数から考えて、どれくらい席を残しておけばいいのかを検討し、その残りの席だけを50点付近の人たちに残しておきます。そういう状態になれば「基準は超えているけれども不合格」になる人が出てきてしまう、というわけです。
■早期には早期の厳しさもあるけれど
以上のような理由で「早期の方が入りやすい」状況が生じるため、私は志望度の高い会社ならば、ある程度早期に受験することをお勧めしています。
「ボーダーラインよりちょっと上で入社しても、後からつらいだけでは?」と思うかもしれませんが、さまざまな企業で分析をしていると、採用時の評価は入社後の活躍にそれほど影響がないことが分かっています(それはそれで別の問題ですが)ので、自分の覚悟さえできていれば問題はないのではないかと思います。
入ってしまえば、後はがんばるだけです。それよりも、本当は入社できたかもしれないのに、ちょっと時間が遅れただけで、その選択肢がなくなってしまうのはもったいないことです。
最後に、一つだけ早期受験の落とし穴を指摘しておきます。早期の方が高密度でその会社にフィットした学生がいる可能性があるので(理由は究極的にはわかりませんが、多くの会社でそういう声を聞きます)、本当は採用基準を超えているのに「相対評価」をされてしまい、不合格になるかもしれないということです。
人を評価するときに自分の中に不動の基準を持って「絶対評価」ができる人は多くはありません。そうなると、早期は見る目が厳しくなってしまう、ということもあるのです。
しかし、それでも「席がなくなる」よりはマシではないかと思います。門が閉まってしまってはどんな評価を受けても、入ることはできないのですから。みなさんの就職活動が悔いのないものになることを!
※キャリコネニュースにて人と組織に関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。