多くの信者たちの犠牲を踏み台にして、国政に携わってきた議員の存在「回答ゼロ」の反省なき政治姿勢を問う
2024年9月20日、立憲民主党など野党による第67回統一教会国対ヒアリングが開かれました。自民党政権下で起こった政治不信は、裏金問題だけではなく、旧統一教会問題への党としての対応の不十分さが、今も尾を引き続けていることを改めて感じるものとなりました。
立憲代表「自民党が再調査をするべきことを明確に訴えていく」
朝日新聞の報道で、2013年の参議院選挙前に安倍晋三首相が自民党本部の総裁応接室で旧統一教会の会長ら幹部と面談した写真が公開されました。
立憲民主党の泉健太代表は「これはかなり組織的な関係があったことを証明するものである。岸田総理は、国会答弁で繰り返し組織的関与はないことを言い続けてきたわけですが、個別の自民党議員に対する調査も不十分だし、この写真を見ても組織的関与は明らかです。立憲民主党としてはこれだけ多くの被害を出している旧統一教会問題で、政治との関与が疑われているなか、自民党が再調査をするべきことを明確に訴えていく」としています。
同党の西村智奈美議員は「2022年の8月当時に自民党の幹事長に全容を明らかにするために第三者機関を設置して調査をやるべきだと申し入れをしようしましたが、申し入れそのものを受け取って頂くことができませんでした。今年の3月15日、盛山文科大臣が旧統一教会の集会に出ていたことで、第三者機関を設置して調査をすべきとの申し入れを行いました。2度にわたって自民党と政府に申し入れましたが、どちらもゼロ回答のまま今に至っています。こういったことが私は旧統一教会の被害を今なお回復できていないことにつながっていると思います。自己点検という形ではなくて、第三者的な客観的調査を行ってほしい」と強く話します。
2013年の参議院選の時に何が起こっていたかが、分かってきた
ジャーナリストの鈴木エイト氏は「朝日新聞が入手した写真と、私がこれまで入手してきたものを合わせると、2013年の参議院選の時に何が起こっていたかが分かってきた」といいます。
「日常的に自民党本部で教団関係者が政治家と連絡できる関係があった。この時の自民党幹事長は石破茂さんでした(中略)一連の理由は、徹底解明するべきだと思います。今の総裁選候補者で、自発的にこの問題に触れる方は一人もいないんです。実は2005年時点で(安倍晋三氏は)統一教会のことを『嫌い』と発言をされています。なぜそこから7年後に組織票の依頼を総裁室ですることになったのかについて、自民党ができないのであれば、第三者委員会で解明すべきです」(鈴木氏)
元統一教会2世信者は、搾取のピラミッド構造になっている点を指摘
旧統一教会2世の元信者のもるすこさん(仮名、30代男性)は「旧統一教会問題の何が悪いかといえば、搾取のピラミッド構造になっている」点だと指摘します。
「上の方は信教の自由や信者の幸せという主張をしますが、ピラミッドの底辺のところで、2世の方々や私の親(現役信者)もそうですけども、50年間信仰してきて貯金ほぼゼロで、70代になるまである意味、教団からしゃぶりつくされています。このような人たちが搾取のピラミッド構造の下で苦しんでいる」
ご自身の被害についても、親の高額献金により幼少時代から貧困状態だったことを話します。
「親が同じ信者仲間に『今月、食費がないから5000円貸して』そのような中で過ごしてきました。毎日同じ服を着て、お風呂に入ってないんだ。そういう目で見られた日々も過ごしました。私は専門学校に通い、成績上位で授業料全額免除でしたが、親は私の奨学金を借りてます。私は親にお金を搾取されていたことになります。私自身、大学に進学したかったのですが、お金がないためにできませんでした。同じ思いをしている兄弟たちに、この気持ちを味わわせたくないので、私は働きながら兄弟たちの大学の学費を払ってきました。総額300万円近くになると思います」
「弱い立場の子どもたちや高齢信者たちを踏み潰している」との厳しい指摘
もるすこさんは、文鮮明教祖によって選ばれた奥さんと結婚しています。奥さんの信者である親も430代の先祖解怨をするために、2000万円近い献金をしており、結婚した時には、彼女自身も500万円ほどの奨学金を背負っていたといいます。
「これまでに兄弟の学費を合わせて、信者である親によって背負わされた総額は1000万円ほどになります。やっと今、統一教会から間接的に受けた献金の被害をすべて完済し終わりました」
こうした自らの体験を踏まえて「(自民党議員は)統一教会というのは、組織の底辺の弱い立場の子どもたちや高齢信者たちを踏み潰している団体ということをしっかりと認識してほしい」とした上で「しっかりと第三者委員会をつくって原因究明をしていく必要がある」と厳しい言葉で訴えます。
総裁選の候補者らが「回答ゼロ」という事態は、絶対にあってはならない
全国霊感商法被害対策弁護士連絡会は、自民党の総裁選の候補者と、立憲民主党の代表選の候補者の方に公開質問状を送っていますが、その理由について、阿部克臣弁護士は次のように話します。
「争点として、全く旧統一教会の問題があげられていないことに、強い危機感を覚えたからです。自民党政治への不信というのは、政治とお金の問題だけではないわけです。旧統一教会という文科省が解散命令請求を行った、いわば反社会的な行為をしてきた団体と長年にわたり付き合ってきた点が、十分に調査をされないまま、被害者も救済されず、そのままになっている。それが選挙でも語られない。それでいいのかという問題意識から、全国でこの問題に取り組む弁護士らが、会議を重ねて質問項目を作り上げて送ったものが、公開質問状になります(中略)これに対して立憲民主党の代表候補者からは、被害者救済に積極的に取り組むといった回答がありましたが、自民党の候補者の議員からは期限までに回答がありませんでした」
被害の最前線に立ち、戦っている人たちが思いを込めて出した質問に対して、自民党の候補者らが「回答ゼロ」などという事態は、絶対にあってはならないはずです。
阿部弁護士は「各候補者の先生が新しい自民党をつくるとか、新しい景色を見せるとか、そういうことをおっしゃってるわけです。本当にそれを思うのであれば、統一教会問題を避けて通ることができないと思います。過去の触れたくない部分なのかもしれませんが、真摯に向き合ってこそ党の信頼の回復というのはできるものだと思います(中略)ここに踏み込めるかが、候補者の本気度がまさに試される試金石だと考えている」と話します。
リモートで参加した被害者家族の橋田達夫さんも「多くの人たちを不幸にして、献金を集めた反社会的な行為をしてきた旧統一教会が、選挙前に安倍さんと会ったということは、大問題だと思っています。自民党にはもう一度旧統一教会との関係を洗い出してほしい。調査してほしい」と強い願いを訴えます。
2010年の神仏具販売会社「ポラリス」の販売員である信者逮捕の事件を指摘
鈴木エイト氏は、重要なポイントとして次の点を指摘します。
「2010年7月に町田の『ポラリス』という統一教会系の霊感商法を行う販売店舗があったんですが、そこの信者が逮捕されています。(2013年6月30日に面談という)3年も経たないうちに、旧統一教会のトップを総裁室に迎え入れて密談をしたことは重大な問題であって、道徳的な責任も問われます」
もるすこさんも、悪質性の実態を示すものとして2007年から2010年までの「統一教会関連の刑事事件」をあげており、そのなかでも、神仏具販売会社「ポラリス」(解散)の1人が逮捕されたことに触れています。
当時の新聞記事によると、この会社は統一教会の信者らが運営しており、当時31歳の女性販売員が、病気を患っている夫を持ち不安を抱えている女性に対して、霊の不安を煽るなどの虚偽説明をして40万円の数珠を売ったとして、不実告知などの特定商取引法違反容疑で逮捕されています。
阿部弁護士も「宗教団体が選挙で特定の候補者の応援をしたり、宗教を信仰している信者が応援したりすること自体は全く問題がないと思います。しかし、反社会的な行為で、様々な問題が指摘されている教団です。そこから組織的な応援を受けて当選した候補者というのは、やはり国民の正当な付託を受けたものではないと思う」として党としてのしっかりとした対応を訴えます。
多くの信者たちの犠牲を踏み台にして国政に携わった議員への政治姿勢を問う
ヒアリングに参加した皆さんがおっしゃるように、多くの1世、2世信者らの金銭的、精神的犠牲の上に教団は組織として存在しており、そこからの応援を受ける議員らは、まさにそうした人たちの犠牲を踏み台にして当選をし、国政に携わっている立場といえます。そうしたなかで、総裁候補者らの公開質問状へのゼロ回答や、旧統一教会問題に対しての踏み込んだ発言のないことは、人の痛みのわからない、苦しむ人たちに向き合わない政治姿勢だといわれても仕方のないものだといえます。
それがより一層の政治不信を強めている状況を作り出していますが、そのことへの自覚がないままに、本当に党改革はなされるのでしょうか。厳しい目をもって私たちもその動向をみつめていく必要があります。