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10月の消費者物価指数は40年ぶりの伸び、前例なき物価上昇となり、今後の予測も困難に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 総務省が18日に発表した10月の消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が103.4となり、前年同月比で3.6%上昇となった。伸び率は2014年の消費増税時をも上回り、1982年2月の3.6%以来40年8か月ぶりの幅となった。

 総合指数は前年同月比は3.7%の上昇となった。そして、日銀は今回の物価上昇はコストプッシュ型なので、こっちを見てくれと言っている、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数、いわゆるコアコアは前年同月比2.5%の上昇となり、日銀が物価目標としている2%を軽く上回っている。

 エネルギーにより総合の上昇幅が0.10ポイント縮小していたものの、生鮮食品を除く食料により総合の上昇幅が0.30ポイント拡大し、通信料(携帯電話)により総合の上昇幅が0.24ポイント拡大していた。

 円安や資源高の影響で、食料品やエネルギーなど生活に身近な品目の値上がりが続いている。そこに携帯電話料金の引き下げの反動も加わった。

 2008年にも一度、コア指数が2%を超えたことがあった。しかし、翌年にはマイナス2%となっていた。日銀も今回の物価上昇はそのときのように一時的となり、1年後は低下してくるとの楽観的な予想をもとに強力で異次元な緩和を続けている。

 2008年の際は中国など新興国の経済成長を材料に、原油価格に仕掛的な買いが入った。しかし、そのタイミングでリーマン・ショックなどが起きて、物価は急低下した。

 今回は原油を含むエネルギー価格の上昇もあったが、それとともに原材料価格の上昇とともに円安によってなどから食料品を含む全般に波及している。価格転嫁も進み、それが賃金にも波及しつつある。

 しかも、物価の上昇は40年ぶり。私が会社員になった年以来であり、これほどの物価上昇を社会人として経験していた現役の社会人は少なくなっているはず。経済、物価、財政などを取り巻く状況は40年前とは様変わりしている。つまり、これは今後の予測も困難であることを示している。

 そうであるならば、異次元の強力な緩和を続ける必要は本当にあるのか。欧米のように足下の動向を見ながらフレキシブルな政策こそが必要なのではないか。

 1年後には物価は元に戻るなどという安易な発想で異次元緩和を続けることは、よりリスクを膨らませかねないのではないか。このような状況下で長期金利を0.25%で抑え込むのにどのような意味があるというのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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