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スペイン・カタルーニャ州の独立問題とは何か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 カタルーニャ州のプチデモン州首相は、10月1日に行われた住民投票の結果、カタルーニャがスペインから独立する権利を得たと強調した上で、スペイン政府との交渉を視野に今後数週間、独立を延期すると発表した(NHKニュースより)。

 カタルーニャ州の独立問題は欧州の新たな火種となっており、スペインの国債も一時大きく売られるなどしていた。

 スペインの北東部にあるカタルーニャ州は1979年にスペイン国家内で自治州の地位を得たが、歴史的にフランスと結びつきが強く独立志向が強い地域となっている。

 10月1日にカタルーニャ州において実施されたカタルーニャの分離独立の是非を問ういわゆる「州民投票」に際しては、独立支持派と治安関係者の間で小競り合いが発生し、州政府の発表によれば800人以上の負傷者が発生した。カタルーニャ州政府は一方的な独立宣言を行う可能性があり、中央政府はこのような行為は違法であるとして認めていない。日本の外務省はサイトでカタルーニャ州に渡航・滞在される方は、安全に注意する必要があることを認識するよう呼びかけている(外務省のサイトより一部引用)。

 ちなみにカタルーニャ州の州都はバルセロナである。有名なサッカークラブであるFCバルセロナの愛称「バルサ」はカタルーニャ語読みから来ているそうである。

 それはさておき、プチデモン州首相は賛成多数で独立が承認されれば、「48時間以内に独立宣言を行う」と公約していた。10日夜からバルセロナにある州議会が開かれ、この中でプチデモン州首相は、住民投票では独立賛成が大多数を占めたと報告し、「住民投票の結果、カタルーニャは共和国として独立国家になる権利を得た」と述べて、スペインから独立する正当性を強調した。そのうえで「スペインとの問題を解決するには対話が必要だ」と述べ、住民投票は憲法違反だとしているスペイン政府との交渉も視野に今後数週間、独立を延期すると発表した(NHKニュースより一部引用)。

 10日の欧州市場はひとまずこのプチデモン州首相による独立延期の発表を好感した格好となった。プチデモン州首相とは政府との交渉の余地を探りたいとみられるが、スペイン政府がカタルーニャ州の自治権の停止も含めた強硬措置に乗り出す可能性もあるとされ、問題が深刻化する懸念もある。これがユーロシステムを揺るがすような事態に発展するのかは読みづらいが、今後の動きには注意すべきと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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