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FRBは利下げ停止を示唆したが、本当に停止できるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 FRBは20日、10月29、30日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。この会合では政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50~1.75%に0.25%引き下げることを8対2で決定した。

 7月、9月に続く3会合連続の利下げとなったが、議事要旨によると利下げの理由としては、景気下振れリスクに保険をかける必要があるとしていた。しかし、今後の政策金利は「景気見通しが大幅に下振れしない限り(現行水準が)継続される可能性が高い」と判断したとある。

 金融緩和はすでに十分で、これまでに実施した利下げの効果を見極めるべきだとして、利下げに反対した委員が複数いたようで、これは投票権を持たない地区連銀総裁も含まれるとみられる。

 結果として、予防的な利下げはここでいったん停止し、その後は様子をみるというスタンスに変更したようである。

 米国株式市場の動きをみると、11月に向けて主要株価3指数は上昇基調となり、過去最高値を更新するなどまさに絶好調といえる。これは米中の通商交渉の進展期待もあってのリスクオンの動きでもあったが、米雇用統計などからみても米国景気は思いの外しっかりとの認識も背景にあった。ドイツなどでは懸念されたリセッションはひとまず回避され、日本も低速飛行ながらもプラス成長は維持している。

 とはいえ、想定以上の経済成長というわけではなく、米株などは期待で買われている側面もある。その期待のひとつとなっている米中の関係については、裏切られる公算も出てきている。これまで繰り返されていたことではあるが、米国が半ば脅しをかけるようなかたちでディールを迫っても、中国がそう簡単に折れることは考えづらい。トランプ政権内にいる強行派が最後にまたちゃぶ台返しを薦める懸念も十分ありうる。

 英国についても総選挙の結果次第ではあるものの、総選挙を行うことでEU離脱がスムーズに行くという可能性が出るとは限らない。離脱を諦めるというのであれば、話は変わってこようが、そうでなければ、アイルランドの国境問題など完全に解決する道はみえてこない。

 世界経済の行方については安定成長が続くとの見方がもっとも可能性は高いのかもしれない。しかし、政治の混乱が市場を脅かし、再びFRBの利下げを政府と市場が要求してくるという構図は今後も十分ありえる。そうなると現在のFRBは断固拒否はできなくなるではなかろうか。FRBが利下げを停止したくとも、果たして環境が許すかどうかは不透明である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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