消費増税のあとには何かが起きる?
菅義偉官房長官は29日の記者会見で、新型コロナウイルスの影響による経済の悪化を受けた消費税減税に慎重な考えを示した(29日付日本経済新聞)。
新型コロナウイルスの感染拡大で経済への打撃が深刻になる中、ドイツでは、7月1日から日本の消費税にあたる付加価値税の税率の引き下げを行った。日本でも消費税率の引き下げを求める声も出ているようである。
消費税率の引き下げのかたちでの経済対策の効果については甚だ疑問であるが、実は過去に、日本の消費増税があったあと、何かしら大きな出来事があった。これは消費増税が直接絡んでいるわけではないものの、結果としてそのようなタイミングになってしまっていた。
1988年の竹下政権時に消費税法が成立し、1989年4月からは、所得税や法人税などの大規模な減税と引き換えに3%の消費税が導入された。日経平均株価は1989年の大納会の大引けで3万8915円を付け、これが最高値となってバブルは崩壊した。そして1989年1月7日に昭和天皇が崩御され、平成元年となった。
1997年4月に橋本政権は減税の財源として消費税の5%への引き上げを実施した。バブルの後遺症ともいえる不良債権処理の遅れがその大きな要因となった。1997年7月には企業の破綻が相次ぎ、11月に入ると金融システム不安が一気に表面化し、三洋証券が会社更生法適用を申請、北海道拓殖銀行が経営破綻し北洋銀行への営業譲渡を発表。さらに証券大手の山一證券が自主廃業を届け出、徳陽シティ銀行が分割譲渡と金融機関が相次いで破綻した。
2014年4月に安倍政権は消費税の8%への引き上げを実施した。1989年と1997年の増税時に比べて政権は安定していた。金融市場も世界的なリスク後退局面となっており、比較的安定しており、日経平均は戻り基調となっていた。このときは何も起きなかったといえるが、むしろこれはレアケースともいえた。
2019年10月に消費税は10%に引き上げられた。2019年5月に新天皇が即位されて令和がスタートした。年号が変わった年という意味では30年前の1989年の消費税導入の年と同様といえるか。その後の金融市場も比較的落ち着いていた。米国と中国との貿易摩擦が大きな注目材料となっていたが、それもひとまず懸念は後退。2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控え、日本が世界から注目される年ともなりつつあるはずであった。ところが、その東京オリンピック・パラリンピックは延期となった。その要因は、言うまでもなく、新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大であった。