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日本人がターゲット!有名人をかたる投資詐欺グループ初摘発か 日本人はだまされやすいとみられている!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

森永卓郎さんや、前澤友作さん、堀江貴文さんなどの有名人をかたって、偽の投資サイトに誘導してお金をだまし取っていた中国人とタイ人からなる詐欺グループの63人が、3月29日にタイ警察により一斉摘発されました。これまでの経緯からみて、中国人グループが主導していた可能性が高いとみています。

【独自】中国人らの投資詐欺摘発 タイ拠点に専門家の名前使い日本人を標的 (テレビ朝日)
ここから、現代詐欺の王道の手口がみえてくるとともに、「PayPay」を使う若者も詐欺のターゲットになってきている現状も出てきています。

日本人を狙う偽投資サイト詐欺グループ、初摘発か

日本国内では、この手口による被害が多発しており、警察庁の発表した令和5年のSNS型投資詐欺は、認知件数2271件で、被害総額は約277億9千万円にも上っています。1件あたり1200万円を超えることになり、深刻な状況です。

これまでも海外の詐欺グループの摘発事例はありましたが、日本人を狙うことに特化して、偽投資サイトに誘導する海外組織が摘発されたのは、初めてではないかと思います。

こうしたグループが存在すること自体、日本人が海外の犯罪組織から、だましやすい存在としてみられていることがよくわかります。今回のタイ警察の摘発には、本当に頭が下がる思いです。

これは氷山の一角、次の課題は?

有名人をかたりLINEの投資グループに誘い、サクラを使って儲かったことをアピールしながら射幸心を煽り、偽投資サイトに誘導してお金をだまし取る手口は、すでにマニュアル化されています。

今回のケースは氷山の一角に過ぎず、これまでの取材からも多くの犯罪組織は東南アジア各地にあることがわかっていますので、今後、いかにして海外警察との連携をして、この種の詐欺の撲滅をしていくのかが次の課題になります。

資金の流れの解明が重要な鍵

何より犯罪グループにおける、国内外の資金の流れをつかむことが重要な点になります。

新型コロナによる緊急事態宣言が出された2020年前後から、偽投資サイトなどに誘導する手口が出てきていますが、当時から変わらないのは、お金の振り込ませ方です。

その多くは国内の銀行口座にお金を振り込ませて、だまし取ります。一時期、暗号資産での送金も多くありましたが、規制が厳しくなったためでしょう。個人名義の口座にお金を振り込ませる形が、再び一般的になりました。

法人の投資サイトなのに、送金先が個人口座になっている。これが被害に遭わないための見極めのポイントの一つになります。

この手口の深刻さは、貯金をすべて奪うだけでなく、信じ続けさせて、お金を借りさせてもだまそうとしてくる点です。その結果、莫大な借金を背負うケースもみられます。

現代詐欺の王道とは、何か

なぜ多くの人が信じてしまうのかといえば、最初の1回、2回は儲かったお金を本人の銀行口座に戻すからです。それにより、いつでも出金できると被害者は思ってしまっています。

以前は、元金を含めて全額を戻していましたが、最近は儲け分だけを振り込むようにしています。お金を失うリスクを減らすためだと思われます。

「少額を出させ、大きな利益を得られるようにみせかけて多額のお金を奪う」

これが、ここ数年続けられている詐欺グループによる王道の手口です。儲かったからといって安易に投資サイトを信じないようにしてください。

中高年だけでなく、「PayPay」も使い、若者もターゲットに

これまでは中高年の被害も多かったですが、若者も狙ってきています。

バイトでためたお金が…“動画見るだけ”簡単副業に注意! (NHK)

今年1月にSNS上の簡単に副業ができるという広告を通じて「指定された動画を見て、画面のスクリーンショットを送れば稼げる」といわれて19歳の大学生が、指示通りに作業をして、お金をだまし取られるケースが取り上げられています。

やはり、この手口でもLINEアカウントへの友達登録を促されており、指示通りの行動をすると「PayPay」を通じて、150円の報酬が支払われたといいます。こうしてお金を振り込み、相手を信じさせた後に、次のステップでは、暗号資産を選んで投資する偽サイト(スペシャルタスク)に誘導させられます。
ここでも3000円を投資すると、利益分を含んだ3900円の振り込みがあり「本当に稼げるんだ」と相手に思わせています。その結果、お金をさらに振り込んで被害に遭っています。

ニュースでは、簡単副業トラブルとして取り上げられていましたが、これはすでにみてきたような海外組織が長年使ってきた手口とみて間違いないと思います。

しかも「PayPay」を使うなど、中高年だけでなく、若い世代も狙ってきており、あらゆる世代が注意をする必要があります。

深刻な二次被害の状況も

非常に深刻だと思うこともありました。

【独自】著名人かたり…SNS型投資詐欺 被害者「すごく巧妙だった」 タイで一斉摘発 (テレビ朝日)

ニュース内における、偽広告に、自らの写真や名前を悪用された、経済アナリストの馬渕磨理子さんの言葉です。

彼女をかたった人物からLINE登録しないかというDMが多く届き、その問い合わせがきただけでなく、「恐らくその詐欺集団と私がイコールだと思っている方が一部いて一時期、会社に脅迫電話とかもあったりして。自分の中で精神的にちょっとギリギリのところまできています」といいます。

あくまでも有名人の方は写真を勝手に使われているだけです。

過去にも、恋愛感情を抱かせられて、偽の投資サイト詐欺の被害に遭った方のなかには、本人が騙される際に使われた写真の海外の有名人の男性、女性もグルなのではないかという話をする方もいました。しかしそれは「まずありえない」という話をしてきました。

ネットを使った組織的詐欺では、指示役につながるようなものは断ち切っており、自らの身に危険が及ぶような行動をすることがないからです。それゆえに、加担している者が顔をさらすなどということは、まずありえません。

あくまでも有名人の方は、写真を使われているだけです。ただでさえ、風評被害を受けて大変ななか、さらなる二次被害を生み出さないように、被害者の方も大変ななかだと思いますが、その点を誤解しないようにしてもらえればと思います。

AIを使っての最新手口も 自分は大丈夫とは思わないで

このところ、以前に比べて、なりすました相手から送られてくるメッセージには日本語の間違いがないように感じていましたが、今回の報道を通じて、文章がAI(人工知能)による翻訳アプリで作成されており、AIを悪用している実態もわかってきています。また、有名人の音声を作って送ってくる手口もあり、日々巧妙化する詐欺の手口です。

非対面のやりとりだけで、いかに私たちから信用を取り付けてお金をだまし取るかを詐欺グループは考えていますので、「自分は騙されないから大丈夫」の気持ちは捨てて、「疑い」の気持ちをもって、誰かに相談することを忘れないようにしてください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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