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【やめる勇気】都内凍結路でのバイク死亡事故を検証する

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
都内の架道橋

先週末の早朝、東京・大田区の橋の上でバイクとクルマ3台が絡む事故が発生、ライダーの男性が死亡するという痛ましい事故がありました。ニュース等によると、6日午前6時50分頃、平和島の勝平橋でバイクとワゴン車がスリップし、バイクに乗っていた30代の男性が道路に投げ出されました。この男性の救助作業中に後続の乗用車が突っ込み、ライダーは死亡。作業をしていた男性も橋の下に転落し両足骨折の重傷を負ったというものです。警視庁によれば、前日からの雨で濡れた路面が凍結していたことがスリップの原因とのことです。

この日の朝を覚えていますが、一段と冷え込みが厳しく、いつもは凍っていない歩道にも薄氷が張っているほどでした。事故現場は自宅からも近くたまに通る道ですが、首都高沿いの高架橋で冬場は東京湾からの海風が吹き抜ける場所です。悪い条件が重なっていました。早朝の冷え込み、凍結しやすい橋、速度の出る幹線道路、そして下り坂。普段は何でもない道が突然凶器に変わるのが凍結の恐ろしさです。完全に凍結していたら、ABSやトラコンがあってもまずコントロールできません。ましてやバイクでは・・・・・・。そして、今回は救助中の2次災害によって亡くなるという最悪のケースでした。

事故に「たられば」はないですが、もし家の前に張った氷を見てバイクに乗るのを思いとどまっていたら・・・・・・。事情は人それぞれですし無責任なことは言えないですが、思い切って“やめる勇気”も大事です。まだまだ寒い日が続きますが、皆様どうぞお気をつけてください。

追記 立体交差や架道橋などは構造上、地熱の影響を受けず、風が橋の下を吹き抜けるので通常の路面より凍結しやすいものです。また、凍結路ではタイヤの接地面の摩擦熱によって氷が溶けることで滑り出すため、氷点下になったばかりが最も滑りやすくなります。逆に氷点下20℃のほうが氷の状態は安定しているそうです。つまり、常に気温がマイナスになる雪国の道路より、真冬の何日かだけ0℃前後になることがある都市部のほうが危険なのです。当然、都市部のドライバーやライダーは凍結路に慣れておらず、こうした知識や運転技術も未熟と言わざるを得ません。

さらにABSへの過信も禁物です。ABSは急ブレーキ時などにタイヤがロック(回転が止まること)するのを防ぐことはできますが、凍結路などの極端な低ミュー路では逆に制動距離が延びてしまい、特に下り坂では止まれなくなります。ABS装備のクルマでも凍結路ではコントロールできないことを今回の事故が物語っています。凍結路では止まれなくなった車両が同じ場所に次々と突っ込んできます。2次災害を防ぐためにも、速やかにガードレールの外側に移動し待機するなど、事故後の機敏な対応も必要です。車道にとどまったまま携帯電話をかけている姿をよく見かけますが、これは自殺行為に等しいと言えます。救助する際も、まずは自分の身を守ることを最優先としてください。

結局どうしたらいいのか・・・・・・。

気象情報に気を配り、凍結の可能性がある時間帯や場所は避ける。さらには鉄道などの公共交通を利用するなど、万が一を考えたリスクマネジメントが求められます。「バイクで出かけたい。でも、今日はやめておこう」その判断が大事ではないでしょうか。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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