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個人向け国債の販売額が伸びてきている、現金がもらえるキャンペーンなども寄与か

久保田博幸金融アナリスト
財務省のサイトのデータより著者作成

 11月に募集され12月に発行された個人向け国債の発行額がトータルで5000億円を超えていた。5000億円を超えたのは昨年3月以来となるが、ここにきての販売額は以前に比べて伸びてきていることも確かである。

 財務省のサイトにアップされている個人向け国債の「発行額の推移」(エクセルファイル)から、2018年1月~12月と2019年1月~12月の発行額の1か月あたりの平均を比べると、2018年が3302億円、2019年が4419億円と1000億円以上伸びていた。

 2018年と2019年では国債の金利を取り巻く環境には大きな変化はない。預貯金の金利についても同様に超低位で安定してしまっている。それにもかかわらず、なぜ個人向け国債の発行額が伸びているのか。

 ひとつには、やはり安全資産として見直された面があったのではないかと思われる。米中の貿易摩擦や英国のEU離脱などのリスク要因が存在し、リスク回避により国債に資金が向かい、個人だけが購入できて、流動性リスクや価格変動リスクのない個人向け国債に資金が向かったのではなかろうか。

 ただし、株価をみると欧米の株価指数は最高値を更新し、日経平均もここにきて年初来高値を更新するなどしている。それでも個人には安全資産志向が高いなか、個人向け国債の利点が次第に理解されてきたともいえるのではなかろうか。

 個人向け国債の利点のひとつに最低保証金利がある。ただし、それは0.05%でしかない。0.05%では買ってもしょうがないとの声を聞くこともある。それでも通常の預貯金金利よりも高いことも確かである。

 しかし、ここにもうひとつ見逃せないものが存在している。これは個人向け国債を購入したことのある人ならば知っていると思うが、証券会社など販売各社は個人向け国債の販売キャンペーンを行っており、それはたとえば最大で、1000万円購入すると4万円の現金がもらえるような仕組みとなっている。

 キャンペーンについては証券会社などによって多少異なっていることもあり、販売している金融機関に問い合わせするか、サイトで確認してほしい。

 たとえば、みずほ証券のサイトをみると、個人向け国債の購入者に、もれなく現金をプレゼントとあり、12月5日から30日のキャンペーン期間中に変動10年タイプを1000万円購入するとプレゼント金額が4万円となっている。これは購入金額や固定と変動、期間によって違いがあるので注意して欲しいが、1000万円で4万円となれば、その4万円も利息相当分としてカウントできることになる。

 このキャンペーンの原資となるのは、財務省から証券会社など販売金融機関に支払われる募集発行事務取扱手数料となっているため、個人の購入者には別途、募集手数料が発生するようなことはない。ちなみに、その募集発行事務取扱手数料は現在、固定3年が額面100円あたり20銭、固定5年が同30銭、変動10年が同40銭となっている。

 できれば10年変動タイプを満期まで持ってもらうのが理想ではあるが、1年経過すれば財務省が額面で買い取ってくれるという安心感もある。また、いずれ長期金利は上がるかもしれないと考えている人にとっても変動金利タイプは都合が良い。手数料の大きさもあろうが、これもあって個人向け国債のなかでも、10年変動タイプの販売が主流になっていると思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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