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小学校の部活動廃止は、教員の働き方改革推進どころか、逆の労働強化でしかない

前屋毅フリージャーナリスト
(提供:アフロ)

 愛知県内で小学校の部活動を廃止する動きが加速している。豊橋市も小学校の運動部の部活動をすべて廃止することを決めたそうだ。教員を働かせすぎる元凶として部活動が槍玉に挙げられている昨今、「教員の働き過ぎ改善のために豊橋市も英断」と受けとった方も少なくないのではないだろうか。

 たしかに豊橋市は廃止する理由に、「教員の働き方改革をすすめる」ためとしている。しかし同時に、「学力向上をはかるため」という理由も掲げている。どちらの比重が高いのか、ここは考えなくてはならない重要なポイントのようにおもえる。

 この件を「NHK NEWS WEB 東海 NEWS WEB」(7月9日付)は、「新年度から小学校で英語や道徳の科目が加わり、教員の準備が必要なことに加え、教員の働き方改革も進める必要があるとして、今年度末で水泳を、来年度末で陸上やバスケットボールなどすべての運動部の部活動を廃止することを決めました」と報じている。文化部についても廃止に向けた検討をするという。

 そして同ニュースは、「空いた時間については、学力が十分でない子どものための補習や教育相談にあてるなどして、児童の学力向上をはかるとしています」と続いている。

 部活動廃止で空いた時間を、教員は補習や教育相談にあてることになるのだ。教員の働く時間を減らすことにはならない。補習や教育相談となれば、これまで部活動に時間を割いてきた教員だけでなく、それ以外の教員も時間を割かなければならなくなるのは目に見えている。働き方改革どころか、労働強化でしかないことになる。

 学力向上のために教員の労働を強化する、ということにほかならないのだ。「教員の働き方改革を進めるため」という理由を掲げること自体が、まやかしでしかない。

 そもそも働き方改革で大きな問題とされてきているのは、中学校の部活動である。そちらを廃止すると打ち出しているところは、愛知県のなかでもないはずだ。毎日のように行われている中学校の部活動に対して、小学校の場合は年間60日間ほどだという。

 それを廃止してしまっても大きな問題にはならない、と豊橋市をはじめ廃止を決めたところは考えているのかもしれない。そこに「教員の働き方改革の推進」を理由に掲げれば、支持も得られやすいとともに、働き方改革に前向きという評価も得られる、と考えたのかもしれない。

 小学校の部活動廃止は、教員の働き方改革とは逆の、労働強化でしかないことを再確認しておく必要がある。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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