日銀は自ら算出し、前年比9.1%と高止まりしている企業物価指数を無視するのか
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日銀が10日に発表した5月の企業物価指数は前年同月比9.1%の上昇となった。
日銀は6月3日に企業物価指数の対象品目について5年に一度の見直しを行っており、4月は古い基準の前年比10%の上昇から新しい基準では前年比9.5%の上昇になった。4月の数値からは伸びが鈍化したとの見方もできるが、高止まりしているとの見方が正しいと思われる。
エネルギーなど資源価格の高止まりや原材料価格の上昇も大きな要因ながら、輸入物価指数の上昇が大きく、当然ながら円安の影響を受けている。
ECBも利上げを示唆し、FRBやイングランド銀行、ECBが金融政策の正常化に向かいつつある。こんななかにあって非常時の金融緩和を緩めるどころが、強化してきた日銀との金融政策の方向性が顕著となった。
このためドル円は20年ぶりの134円台に上昇している。20年前、黒田日銀総裁が財務官のときにつけた直近の円安水準である135円台も視野に入りつつある。
企業物価指数もあたりまえだが、物価指数である。日銀の物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)ではあるものの、物価の番人とされる日銀は企業物価の動向にも目を配る必要がある。しかも企業物価は日銀自身が算出し、最も状況を理解しているはずである。
それにもかかわらず、先日物議を醸した「きさらぎ会における講演」では、この企業物価についてはほとんど触れていない。
それどころか、資源価格上昇により所得面から下押し圧力を受けている状況では、金融緩和の継続によって、そのマイナスの影響を和らげる必要があります、と指摘している。しかし、物価上昇にあった金利を我々は受けとることで、物価上昇による影響を多少なり緩和するということは考えられないのか。
むろん物価に応じた賃金の上昇が必要なことはたしかである。しかし、非常時の緩和政策をさらに強化し、長期金利を押さえ付けることによって金利の機能を低下させてしまっている。それでいったい何がしたいのか。長期金利を押さえ付けて、円安となって物価が上がって、それで賃金も上がるのか。
金利の機能を回復させることで、国や企業に緊張感を与えて、資金の流れを活性化させ、景気回復に寄与する面も当然あろう。少なくとも金融政策には柔軟性や機動性が求められるはずであり、それを完全に否定するというのはどういうことなのか。